赤トンボと赤マント

 公園の池で、葦(あし)の葉にとまっている赤トンボがいた。
 そばで観察していると、大きなトノサマガエルが水中から突然、ぴよーんと飛び上がって来た。
 赤トンボは、すばやく危険を回避するべく空へ舞い上がった。
 無事にトンボはカエルから逃れることが出来た。
この赤トンボは、調べてみると、ナツアカネではなくショウジョウトンボらしい。
 

トンボ科の昆虫。雄は全体に鮮やかな赤色、雌は橙(だいだい)色。夏、池沼に普通に見られる。本州以南、アジア東部の熱帯に広く分布。  『大辞泉

 ナツアカネとの見分け方は、ショウジョウトンボは翅(はね)の付け根が赤くなっているという。
 ナツアカネの方は、翅は全体が透明である。このトンボは、どうやらショウジョウトンボのようである。

 「本はねころんで」で、小沢信男さんの作中人物・「写真家 牧野次郎」をめぐってああでもないこうでもないと思案しているようですね。
 種村季弘・編『日本怪談集』(上)1989年初版(河出文庫)で、小沢信男「わたしの赤マント」を読んでみました。
 この(上)の解説は編者の種村季弘さんで、「わたしの赤マント」についての言及はないのですが、参考になるところでは、
 坂、橋、川、それに街頭、旅館とみてくると、いずれもだれにでも通過できる場所とわかる。家のように、一族や一個人に私有されている場所ではない。共同幻想の成立する空間である。家族神話に拘束された前者では、日常みなれた何の変哲もないものが化け、共同幻想の支配する後者では、みなれない異人にぶつかる。 
 とあるのですが、赤マントはこの「みなれない異人」に相当するのではないでしょうか。
 この『日本怪談集』(上)は、〈家〉、〈坂〉、〈沼〉、〈場所〉に分けられて編集されています。
 「わたしの赤マント」は、〈場所〉に入れてあり、武田百合子の「怖いこと」と半村良の「終の岩屋」の間に収録されています。
 著者紹介は高遠弘美さんが担当されていますが、小沢信男さんの紹介は次のようなものです。
 一九二七年、東京生まれ。日大芸術科を卒業後、「記録芸術の会」に参加。「わたしの赤マント」にも明らかなように、記録という営為を根本に据えて書くことを主張し、小説やルポルタージュといったジャンル分けにこだわらない文筆活動を展開している。おもな作品に、『東京の人に送る恋文』『大東京24時間散歩』『いま・むかし東京逍遥』『犯罪紳士録』『わが忘れなば』『小説昭和十一年』『若きマチュウの悩み』『悪女』『書生と車夫の東京』などがある。どれもいい意味で肩の凝らない工夫がほどこされている。