ジャック・ロジェのこと

 午前五時、東の空は、朝焼けの色でほんのりと赤らむ。
 木星が南の空に高く南中しているのが眺められた。
 朝顔が、北寄りの風に吹かれてゆれている。
 午後、街路樹のツバキの実が光り輝いていた。艶々している。
 夕方、散ったハスの花は、花托(かたく)が膨らみ、如雨露の先の形になり、ハスの実が顔をのぞかせていた。
 

 正岡子規の句に、「蓮咲いて百ヶ日とはなりにけり」。
 明治二十八年の句である。
 前書きに、古白百ヶ日。*1 
 新刊で、金井美恵子著『目白雑録4 日々のあれこれ』(朝日新聞出版)を読む。「日付と記憶、その他 1」に、ジャック・ロジェ体験が書かれているのに注目する。
 '09年の十一月と十二月に、ほぼ半世紀も遅れて『アデュー・フィリピーヌ』と『オルエットの方へ』をはじめて見たのだった! なんということだろう・・・・・・興奮のあまり、エリック・ロメールより好きだと思ったほどだったが、年があけて一月の十一日の夕刊で八十九歳のロメールの訃報を見た時のは、なんといったらいいか、唖然としたとでも言う他になかった。
 115〜116ページ

日々のあれこれ 目白雑録4

日々のあれこれ 目白雑録4

*1:古白は藤野古白。