小津安二郎の映画『東京の合唱(コーラス)』

東京の合唱

 21日、小津安二郎監督の映画『東京の合唱(コーラス)』(1931年、松竹キネマ、90分、白黒、無声)を映像文化ライブラリーへ見に出かけた。活動弁士佐々木亜希子さんの語りで観る。
 『東京の合唱』の上映の前に、無声映画が三本が先行して上映された。

 1、アニメーション、瀬尾光世の『一寸法師 ちび助物語』
 2、アメリカのドタバタ喜劇『ラリーのスピーディ』
 3、1902年、ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行

 佐々木亜希子さんの「夏休み活弁ワークショップ 活動弁士にチャレンジ」で小学生から高校生までの参加者がグループに分かれて、映画を見ながらセリフを考えて台本をつくり、ナレーションや登場人物のセリフを映画を何度も見ながら練習した。
 その成果を発表するのが、上記の三本の映画だった。
 三本をグループの活弁の語りとナレーションとで見た。
 登場人物のキャラクターを面白く演じていた。館内は一本終わるたびに、拍手喝采。 
 活弁で、無声映画が蘇(よみが)える! これは楽しかった。

 この後、小津安二郎監督の無声映画『東京の合唱(コーラス)』松竹キネマ(蒲田撮影所)が活弁で上映された。
 岡田時彦、八雲恵美子、斎藤達雄飯田蝶子、それに子役で高峰秀子が出演している。

 パンフレットに、
 保険会社に勤める主人公の岡島は、同僚がクビになったのに抗議して、自らも解雇される。岡島は学生時代の恩師と再会し、彼が営む洋食屋を手伝うことになるが・・・。随所にギャグをちりばめながら、サラリーマンの哀愁をにじませる。 
 冒頭、学生時代の岡島(岡田時彦)が、体育の教師の大村先生(斎藤達雄)の校庭での授業に遅れて姿をあらわす。もう一人遅刻して来る生徒もいる。
 他の生徒は隊列をつくって並んでいる。
 上着を脱いでシャツになれと号令をかけられた生徒たち、一人岡島のみ上着の下は、なにも身に付けていない。裸のまま隊列に並ぶのでありますが、一人要領の悪い生徒だった。
 岡島と大村先生の二人のやり取りが、岡島が要領が悪くすることなすこと場違いな、行動が見ていて滑稽なしぐさに終始する。その喜劇風なギャグやユーモアのシーンが可笑しくて笑える。

 その生徒もいつしか卒業をし、保険会社へ入社し、結婚もし、子供が二人男の子と女の子がいるのですが、なんと女の子は高峰秀子が子役で出演。
 保険会社で、同僚が解雇されたのに抗議したためにクビになった岡島でありますが、岡島の妻(八雲恵美子)が、不景気な世の中を保険会社をクビになった夫を支えます。
 職業紹介場の前で岡島は、恩師の大村先生に偶然に再会する。
 事情を話すと大村先生は、退職していて自分の経営する洋食屋を手伝わないかと提案する。
 恩師の洋食屋を手伝い始めた岡島を街中でいるのを子供とともに目撃した妻は、夫の就職活動に、妻には妻のプライドがあると納得しないでいる。
 だが、とうとう一緒に妻も洋食屋を手伝いだした。カレーライス屋であります。
 ラスト、その恩師大村先生の教え子の紹介で、岡島はなんとか再就職にこぎつけるのでした。
 東京を離れた地方へ女学校の教師として、東京にとどまりたい岡島ではありますが、そこはこの大不況の日本、どこへでも家族揃って赴任しようと決意するのでありました。*1

*1:追記、保険会社の同僚役に、山口勇が出演している。