映画『ウェイヴ』

映画「ウェイヴ」

 20日、「日独映画祭EN」から、デニス・ガンゼル監督の映画『ウェイヴ』(2008年、ドイツ、108分、カラー)を観る。観客は40人ほど。
 出演はユルゲン・フォーゲル、フレデリック・ラウ、マックス・リーメルト。
 プログラムに、

 独裁制をテーマにした授業を受け持った高校教師ヴェンガーは、授業の中で独裁者の役割を演じる。はじめは独裁制に嫌悪感を示した生徒たちも、規律のある授業に高揚感を覚え、次第に行動をエスカレートさせていく・・・。若者たちの危い心理を描き、ドイツで大ヒットした作品。
 冒頭、実話を元に映画化した旨の字幕あり。
 体育の教師ヴェンガー(妻も同じ高校で教師をしている)は月曜日、火曜日、水曜日と一週間の校長からいやいやながら引き受けた独裁制についての授業を進める。
 教室では初めは生徒たちからの反発があったのだが、独裁制というものがどのようなものかを実感するために、ヴェンガー自身を呼ぶときには様を付けて呼ぶように提案する。
 規律のある授業にするためと称して制服を白いシャツに統一しようと、教師ヴェンガーは提案する。
 その決定に反対した者を、賛成した多数の生徒が規律がいやなら出て行けと少数の生徒を排除していくようになる。
 しだいしだいに、クラスでの集団的な結束、一体感に生徒たちの気分が高まっていく。
 生徒たちが自分たちの集団を「ウェイヴ」(波)という名前をつけて自称するようになり、そのロゴマークのシールをつくって、夜中に街へ繰り出し、集団で建物の壁や商店のショーウィンドーへぺたぺたあたりかまわずに嵐のように貼り付けていく。
 建物の壁へも「ウェイヴ」のロゴマークの型紙を使ってスプレーで落書きしていくのだった。
 生徒たちが、自分たちの行為で、自分たちの存在感を表現するかのごとく・・・。
 体育教師ヴェンガーは水球チームの監督をしている。他校の水球チームとの試合に自分の受け持ちのクラスの生徒たちが他校との水球の対抗戦に応援をしている時に、選手同士の競技中の乱闘から、応援する生徒同士の乱闘騒ぎになってしまうのだった。
 擬似独裁者を演じるヴェンガーの言動に批判的な彼の妻は、ついに夫の元を去って行く。
 彼は落書き騒動と水球の試合でクラスの生徒たちの惹(ひ)き起こした乱闘騒ぎの責任を取るべく生徒を集めて独裁制の授業でつくった、「ウェイヴ」のリーダーを今後辞めると宣言する。
「ウェイヴ」も解散だと宣言するのだった。
 だが、この集団的な結束、集団的な規律やその魅力に取り付かれた一人の男子高校生が「ウェイヴ」が解散するのはいやだと拒否し、このまま続けてくれと懇願する。
 集まった生徒たちの前で。
 ヴェンガーは、その意見に反対し解散を告げる。だが、納得しないその男子高校生はピストルを取り出し脅すので、教室は生徒の恐怖で混乱し、止めさせようと騒ぎの最中に突然に悲劇的な結末を迎えるラストが衝撃的である。