昨年の12月に亡くなった高峰秀子さんの特集が今月から二ヵ月にわたって、映像文化ライブラリーで、開催される。
5日、山本嘉次郎監督『馬』(1941年、東宝映画、映画科学研究所、127分、白黒)を観る。
出演、高峰秀子、竹久千恵子、藤原鶏太、丸山定夫、沢村貞子。*1
プログラムに、
南部駒の産地として知られる岩手山麓の農村で、ひたむきな愛情で子馬を育てる農家の娘いね(高峰秀子)。長期ロケーションによって、四季折々の美しい風景を織り込みながら、少女と子馬の絆を詩情豊かに描く。
脚本・山本嘉次郎、チーフ助監督に黒澤明、撮影を唐沢弘光、鈴木博、伊藤武夫、三村明の四人が分担している。夏、秋、冬、春の季節で撮影(キャメラマン)が違う。
情熱的な夏祭りの踊り、なまはげ行事、子供らの雪でつくったかまくら遊び、雪の山間の温泉地へ少女いねが馬の青い草を求めて行くシーン、馬が子馬を出産する一夜と夜明けを迎える一家、山すそに馬が放牧されている広々とした雄大な高原、馬を世話するいねの成長と家族の二年間を、季節の変化とともに描く。
軍馬が陸軍で必要とされていた時代の様子がうかがい知れる。大変な高値で軍馬が取引されていた。
いねの母親を竹久千恵子が演じている。藤原鶏太が父親役を、丸山定夫がいねの担任教師役を好演。
ラストで、弟が乗る列車を、姉のいね(高峰秀子)が馬にまたがり追いかけるスピードのある流れるような移動撮影による長いシーンは、昨年の「生誕百年記念 山中貞雄監督特集」で上映された『戦國群盗傳[総集篇]』(1937年)で、馬に乗った盗賊たちが疾駆するシーンを思い出した。
竹久千恵子は、この映画のあと太平洋を越えてアメリカへ、後に1942年(昭和17年)に日米交換船で帰国。丸山定夫は1945年8月広島の原爆で亡くなる。