「ロシア・ソビエト映画特集」が映像文化ライブラリーで始まった。
セルゲイ・ソロヴィヨフ監督の映画『想い出の夏休み』(1975年、92分、カラー)を観る。
出演は、ボリス・トカレフ、タチヤーナ・ドルビチ、イリーナ・マルイシェワ、ユーリー・アギーリン。
プログラムに、
ミーチャは水辺に立つレーナを見て恋心を抱く。しかし、彼女は同じクラスのグレーブという少年に惹かれている。夏休みが終わろうとする頃、ミーチャはレーナに愛を告白するが・・・。思春期の少年少女を主人公に、郷愁をこめて描く。ベルリン国際映画祭監督賞受賞。
冒頭、夏休みに生徒を引率している男の教師が、生徒たちにレールモントフの詩を引用しながら語りかける場面がある。
夏休みを、自然に恵まれたキャンプ場で生徒たちはキャンプ生活をしている。
近くの農場へ出かけジャガイモの収穫を手伝ったり、池で水遊びを楽しんだり、野外劇場で生徒同士で歌ったり踊ったりと、競いあう。優勝者にはご褒美がもらえる。
食堂で食べたり飲んだり、にぎやかに生徒たちは過ごしている。
夜は、野外のスクリーンにスライドでモナリザの映像を映して、モナリザの微笑みをめぐる500年の歴史的論争についての先生の「授業」がある。
微笑みをめぐる先生の談話が、微笑のもつ深い意味をめぐり哲学的である。
レールモントフの「仮面舞踏会」という芝居を生徒たちが出演してやることになる。
「仮面舞踏会」を観て、見物人や生徒たちは大喝采だ。
ミーチャとグレーブという二人の少年が、たがいに意地を張って、仲たがいしてしまう。
それを察した先生は、二人を仲直りさせる(?)ために、近くの村へ食料のミルクを取りに行かせる。
その帰路で、二人で荷車にミルク缶を積んで運んでいたが、折りしもにわか雨になり泥まみれになりながら取っ組み合いの喧嘩をしてしまうのだった。
ミーチャはラストで、レーナの友だちのソー二ャから告白されるが、ミーチャには意味がなかった。
風に吹かれゆれる木々の梢(こずえ)、ジャガイモ畑からの帰路のにわか雨、強い日差しで日射病にかかるミーチャ、看病されるミーチャ、池での生徒らの水遊び。
「仮面舞踏会」という芝居といったエピソードとともに、ひと夏の少年少女の甘酸っぱくもほろ苦い想い出を描いている。