木下惠介監督の映画『結婚』(1947年、松竹、85分、白黒)を映像文化ライブラリーで観る。
観客は30人ほど。
出演は、田中絹代、上原謙、東野英治郎、東山千栄子、井川邦子、小沢栄太郎。
原作は木下惠介。脚色が新藤兼人である。
12月プログラムに、
松川文江と菅原積は相思相愛の仲だが、文江の父が失業中という家庭の事情が二人の結婚を阻んでいた。田中絹代と上原謙、「愛染かつら」のコンビで、戦後間もない頃の恋人たちを描く。
映画は、白い「雨が降る」状態の映写だった。フィルムの状態が良くない。
音声も会話がやや聞き取りにくく、音楽の音は割と聴けるレベルである。
映画の完成は昭和22年3月と冒頭のクレジットにあった。
暖房は部屋の中にコタツがあり、文江(田中絹代)の父(東野英治郎)や文江の妹・君子(井川邦子)、母(東山千栄子)らが、帰宅するとコタツに手を入れて温めるシーンがある。
当時の東京では家庭で電気による暖房は普及していない。コタツは木炭か豆炭でしょうか。
積(上原謙)と文江が食事をする場面があり、外食やちゃぶ台を囲ってのシーンが多い。
父の昔の部下・島本(小沢栄太郎)が料理屋をやっていて繁盛している。
手伝わないかと誘われているが、島本の言い方に反発するものがあって就職を断ったため、娘の結婚を認めることをためらっていた。
島本が、父の留守中に詫びに訪れ手土産にめざしを置いて帰っていた。
夕食時に父が、めざしが島本からのものだと知るや、庭に捨てて癇癪を起こして家を出で行った。文江が追いかけて追いつき、癇癪が収まり親子で家に帰る途中、お腹が空いていたので、屋台のおしるこ屋で二人が並んで食べるシーンに、観ていてなごむ。
華やかなシーンで、楽団の演奏がついたダンスホールで文江と積が踊るシーンに目を瞠(みは)る。
積の母が危篤だという知らせがあり、急遽故郷の九州へ帰らねばということになり、文江へ一緒に母に会ってくれないかと積が懇願する。
迷う文江、寝ていた父はその話を聞き、娘の結婚を許すことにした。
さあ、それから明日の朝八時までに東京駅へ駆けつけるために家族揃ってトランクに、文江の荷造りをする。善は急げとばかりに・・・。
あくる朝、家族の門出の酒を飲み交わし、文江らは東京駅へ向かうのだった。
東京駅の前の通りには、米軍のジープや路面電車が走っている!
街頭のデモ行進など当時の世相がうかがい知れる。