冬のモンゴル3

 昭和十九年十二月十五日
 この日、爆音が響いて飛行機による荷物がやっと届いたので、いよいよ、磯野富士子さんらは貝子廟より西ウジムチンへの旅を始めることになります。
 乗物は駱駝車で行くことになるのですが、この駱駝車は西ウジムチンを十二月四日に出て貝子廟へ迎えに来たもので、十日に貝子廟に到着しました。西ウジムチンより貝子廟まで六日かかっています。
 それを、駱駝車で西ウジムチンへ戻るように旅をするわけです。
 五頭来た駱駝のうち病気になった一頭をおいてきたために、駱駝車は四台で行くことになります。
 駱駝車というのは、つぎのような乗物です。

 《駱駝車は全部で五台。その一つには幌(ほろ)がついているとのこと。夕食後外に出てみると、門の前に青い木綿のマイハン(木綿の三角テント)を張って、そばに車が並べてあり、駱駝がつないであった。駱駝車というので何か変ったもののような気がしていたが、やはり普通の牛車と同じで、ごく原始的なもの。その中の一台、上に白いフェルトでカマボコ型の幌がついているのが私たちの乗って行く車だ。》 十二月十日 40〜41ページ

 黄色い皮のモンゴル服を着た案内人セレーテルが白馬に乗って、駱駝車の後になり先になりして付いて行きます。