「喜劇映画の異端児 渋谷実監督特集」で、7日、渋谷実監督の映画『自由学校』(1951年、松竹、110分、白黒)を観る。
1月のプログラムから引用すると、
獅子文六の同名小説の映画化。のんびり屋の夫が、口やかましい妻に家から追い出されたことから巻き起こる様々な騒動を描き、当時の世相を風刺した喜劇。この年に大映も「自由学校」を映画化しており、同じ週に封切られて話題を呼んだ。
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
前日上映された渋谷実監督の『奥様に知らすべからず』(1937年)を観たあと、コーヒーを飲みながら映画通の某さんと渋谷実の映画など談話する。
『奥様に知らすべからず』に笠智衆が拳闘家(ボクサー)役で出演して、妙に生き生きとした演技を見せて不思議と印象に残った。
小津安二郎の映画での笠智衆とは、まるっきり違うイメージの俳優を見る思いだったからだ。
拳闘家役の笠智衆、その驚きをめぐって話していると、某さんによると、笠智衆が語っているのだが、笠智衆は小津の演出法がいやだったらしく、渋谷実の演出の方を気に入っていたらしい。馬が合ったということだろうか。
「これ見てみませんか。」
と言って袋から取り出してきたスクラップ帖を見せてくれる。(サブカル系の古書店で入手したとか)
なんと「自由学校」のスチール写真や公開されたころの雑誌や新聞記事のスクラップが貼られている。
ページをめくっていくと、「自由学校」のシナリオがそっくり保存されていた。
シナリオの保存状態はきれいでとても良い。
ガリ版印刷であった。
「自由学校」のシナリオの最初のページに、製作意図が書かれている。
その部分を引用してみます。
製作意図 自由とは? 夫の、妻の、恋人同士の「自由」とは・・・・果して「エデンの園」の様に美しく楽しいものであらうか。この問題を、観客と一緒に考へてみたい。観客一人一人が、五百助であり、駒子であり、又ユリや隆文でもあるのだから・・・・・。
『自由学校』での笠智衆は佐分利信と高峰三枝子の家で家具を壊したりと大暴れをする! 凄い。凄すぎる!
自由とは? 当時の世相を風刺と笑いで描き見どころの多い面白い映画である。