渋谷実監督の映画『悪女の季節』

悪女の季節

 13日、「喜劇映画の異端児 渋谷実監督特集」の一本、『悪女の季節』(1958年、松竹、110分、カラー)を観た。撮影が長岡博之である。
 出演は東野英治郎山田五十鈴岡田茉莉子伊藤雄之助杉浦直樹、三好栄子。脚本は菊島隆三

 プログラムに、

 老実業家・八代泰輔の財産を手に入れるため、殺害の機会をうかがう内縁の妻とその娘。復讐に燃える甥も八代の命を狙う・・・。欲望にとりつかれた人間たちの姿を喜劇タッチで描く。渋谷流のサスペンス映画。

 八代(東野英治郎)を殺してその財産を狙っているのは、内縁の妻・妙子(山田五十鈴)、妙子の娘で薬学部学生の娘・眸(ひとみ)(岡田茉莉子)、八代の甥(おい)・慎二郎(杉浦直樹)の三人である。
 妙子の昔のなじみ客で指圧師だったが今は白タクの運転手をしている片倉(伊藤雄之助)が、借金をしに屋敷を訪れ、ガスで八代を殺害しようとした妙子の仕業(しわざ)を見破る。
 片倉は片目が不自由で、八代の金と片目をもらうという条件で妙子に丸め込められる。
 さっそく、屋敷の窓から八代が顔を出す一瞬を狙ってロープで首を吊るしかけを屋根に上がって妙子と図るのだった。妙子は一人殺し屋秋ちゃん(片山明彦)を雇い仲間にする。
 三好栄子は、屋敷のお手伝いの婆や役でぬーぼーとしたボケ役である。
 眸(岡田茉莉子)と八代の甥(杉浦直樹)が八代が避暑に山の別荘に出かけるのを追ってオートバイに相乗りで山道を走らせるシーンがある。山岳ロードレースのような疾走ぶりだ。
 山荘のある避暑地で八代に騙されて殺し屋と甥(杉浦直樹)の二人はダイヤを埋めてあるという地面を掘って砲弾を見つけ掘り出すも爆発して吹っ飛んでしまう。
 杉浦直樹の入院した病院の医師を中村伸郎が演じていた。
 山荘近くに気象観測所があり、その気球のラジオゾンデに八代がダイヤの小箱をくくりつけて空へ飛ばした。妙子は八代の口から本物のダイヤのありかを確かめると、八代を撃ち、気球のゆくえを追いかけて行く。
 火山の火口付近で、妙子と眸が争うように気球を追う。
 追いついて妙子が気球を銃撃すると火口へ気球は落ちて行った。
 ラストは、唖然(あぜん)としているふたりももつれ合うように火口へと転がり落ちてゆくのだった。
 恐怖と笑いがバランスをとって冒頭から最後まで展開し、ハラハラドキドキ楽しめた。
 山田五十鈴岡田茉莉子の欲にかられた悪女ぶりも見どころだろう。
 伊藤雄之助の片倉役もなかなか良かった。
 登場人物を戯画的な人物に演出しているのが渋谷流の持ち味かな。強烈なパンチのある作品だ。