『牡牛座 レーニンの肖像』

牡牛座 レーニンの肖像

 「アレクサンドル・ソクーロフ監督特集」の一本で『牡牛座 レーニンの肖像』(2001年、ロシア、日本、94分、カラー)を観る。
 出演は、レオニード・モズゴヴォイ、マリヤ・クズネツォーワ、ナターリャ・ニクレンコ。
 6月プログラムに、
 

1922年、モスクワ郊外の村で療養生活を送る晩年のレーニン。外界から隔離されている彼のもとに客人がやってくるが・・・。ソ連建国の祖、レーニンの孤独な晩年の一日を描く。

 半身が不自由になって療養生活を送っているレーニン(レオニード・モズゴヴォイ)のある日を描いている。
 なぜか電話回線がモスクワとの間で使えない。
 見ていてレーニンがモスクワの党組織と意図的に隔離されているような気配が・・・。
 レーニンの周辺には妹(ナターリャ・ニクレンコ)と妻(マリヤ・クズネツォーワ)とリハビリにあたる医療関係者や警護にあたる者らがいる。
 レーニンは外の空気を吸いに、車で別荘の近くの野原まで出かける。
 道に大木が横たわっていて通れない。警護人にどけさせる。(あとから気付くのだが、この大木をつまりレーニンの行く道をふさぐ者、モスクワから来たグルジア人の隠喩か。)
 半身が不自由で苛立ち癇癪を起こし、周囲に当り散らすレーニン。その孤立感、無力感。
 別荘へやって来たのはグルジア人の政治局員だった。
 だが、レーニンは、グルジア人ではなくユダヤ人の同志の方を後継者に望んでいるような言葉をつぶやく。

 映画を観て、紀伊国屋書店から刊行された本で、バートラム・D・ウルフの『レーニントロツキースターリン』(菅原嵩光・訳)という本を思い出した。