蜻蛉(とんぼう)の夢や幾度杭の先


 夜明けは静かである。
 明るくなると、セミが鳴き出した。
 午前八時十五分、一分間の黙祷。
 8月に入ると、シオカラトンボを見るようになった。
 公園の池で一ヶ所にとまってシオカラトンボは動かない。
 数センチと近づく。それでも逃げないでとまっている。
 触れるくらいに近づくと、パッと飛び去る。
 しかし、すぐに同じ場所に戻って来るのだった。
 腹が青白い粉をまぶしたようなトンボで、シオカラトンボの雄である。
 雌のムギワラトンボは見かけなかった。
 7月中旬ころに多かったトンボはクロイトトンボだったが、今はその姿を見ない。 

トンボ科の昆虫。中形で最も普通のトンボ。四〜九月に現れ、成熟した雄は腹に青白粉を装う。雌は淡黄褐色でムギワラトンボという。  『大辞泉

 「蜻蛉(とんぼう)の夢や幾度杭の先」(夏目漱石)。