尾形明子著『華やかな孤独』

 10月の新刊で、尾形明子著『華やかな孤独 作家林芙美子』(藤原書店)が、作家林芙美子を同時代に生きた女性作家の証言をもとに新たな林芙美子像を浮彫りにしている。
 藤原書店のPR誌「機」10月号で、編集部・構成による著者の刊行に寄せてという文によると、文学辞典に載っている林芙美子の代表作「放浪記」の雑誌連載の年月日が実際と違っている始末だという。

 「放浪記」は、1928年(昭和3年)10月から1930年(昭和5年)10月まで、20回にわたって『女人藝術』に連載されたそうだ。
 しかし、いままでの『現代文学大辞典』(1965年、明治書院)をはじめ文学辞典に記載の「放浪記」の連載時期の記述に誤りがあるという。

 《言葉を持たない人たちの代弁者として、芙美子はひたすら書き続け、四十八歳の生を閉じた。戦後を六年しか生きなかった。その早すぎた死は、戦時下の自分の言動を覆い隠したい女性作家にとって僥倖だった。彼女たちは芙美子を、戦争協力のスケープゴートとして差し出し、自らは無傷で新しい時代を生きた。このことが、長い間、芙美子が正当に扱われることを阻んできた。》

 《芙美子の葬儀の日には、二千人を超す人びとが参列した。その多くは愛読者だった。芙美子と読者の「仄かな暖かい」関係は、いまなお続いている。》

華やかな孤独 作家 林芙美子

華やかな孤独 作家 林芙美子