「釜の湯氣秋の蚊乗つて失せにけり」は、畑耕一の俳句で、秋の句です。
夏の句には、つぎのような句があります。蚊を眺めているのでしょう。
「ぼうふりのお伽の国をのぞきけり」
双翅(そうし)目カ科の昆虫の総称。体や脚は細く、翅(はね)も細くて二枚あり、吻(ふん)が発達し針状。飛ぶときは毎秒二〇〇〇回以上も翅を動かすため、羽音の周波数は高い。水面に産みつけた卵からかえった幼虫は水中にすみ、ぼうふらとよばれる。主に夏に成虫になる。イエカ、ハマダラカ、ヤブカなど種類が多く、アカイエカは日本脳炎を、ハマダラカはマラリアを媒介する。 『大辞泉』
ぼうふりは、余り聞かない言葉なので、辞典で調べると棒振(ぼうふり)の読みで、ボウフラのことでした。
水たまりかなにかで、水の中にたくさんのボウフラがいるのを眺めて、その様子をお伽の国と見立てているのでしょうか。
「ぼうふりのお伽の国をのぞきけり」の句につづいて、
「棒押や蚊柱の中へぐいぐいと」という句がつづきます。
これは連想ですが、ボウフラのお伽の国をながめていて、棒を持って来てボウフラがうじゃうじゃと発生している中へ、ぐいぐいと押している光景を思いました。