もうすこし、畑耕一の虫の句を見て行きましょう。
夏の句から、秋の句にもどると、もう一句あります。
「なかなかに蟷螂猛る杖の先」
ある日、カマキリに出合った。その姿を見て、杖をそっと近づけた。
すると、カマキリは杖に向かって鎌を振り上げる。そんな光景を思い浮かべました。
荘子の蟷螂の斧の光景です。
夏の句にもどると、「棒押や蚊柱の中へぐいぐいと」につづいて、
「蝿一匹と登りつくしぬ煙突夫」
蝿一匹とは虫ではなく、煙突夫でしょう。
高い煙突があって、その煙突の頂上の先端に登りつめた煙突夫の姿を、下から眺めると一匹の蝿がいるように見えたという光景でしょうか。