叟(そう)一人巴里に食ふ鴨寒からむ


 川の浅瀬に渡り鳥のヒドリガモの群れを見る。
 鳥たちはそれぞれ餌(えさ)を探して水面を泳いでいた。
 例年やって来る渡り鳥である。
 

カモ目カモ科の鳥のうち、ガン・ハクチョウ類以外の総称。中・小形の水鳥。先の丸い平らなくちばしをもち、指に水かきがある。一般に雄の羽色は派手で、雌は褐色。日本には秋に渡ってきてつがいをつくり、春に北方の繁殖地に戻るものが多い。マガモコガモオナガガモ留鳥カルガモなどは水面で餌をとり、キンクロハジロなどは潜って餌をとる。かもどり。あしがも。  『大辞泉

 大辞泉の引用句は、「野ざらし紀行」の句からの引用で、「海くれて鴨の声ほのかに白し」(松尾芭蕉
 5・7・5ではなく、5・5・7である。
 芥川龍之介大正九年の俳句に、
 「手賀沼の鴨を賜る寒さかな
 「叟(そう)一人巴里に食ふ鴨寒からむ
 それぞれの句に、前書きがある。
 「手賀沼の鴨を賜る寒さかな」には、「鴨の御礼 香取秀真に」とある。
 「叟(そう)一人巴里に食ふ鴨寒からむ」には、「天岡先生を懐ふ」とある。 
 叟(そう)とは余り聞かない言葉だが、調べるとおきな、老翁という。
 天岡先生とは何者だろうか。