映画『僕と未来とブエノスアイレス』

『僕と未来とブエノスアイレス』

 「中南米映画特集」で、アルゼンチンのブエノスアイレスの下町のガレリアと呼ぶアーケードの商店街で暮らしている青年の心模様を描いた映画を観る。
 原題はEl Abrazo Partido。
 ダニエル・ブルマン監督の映画『僕と未来とブエノスアイレス』(2004年、アルゼンチン、フランス、イタリア、スペイン、100分、カラー)で、出演はダニエル・エンドレール、アドリアーナ・アイゼンベルグ、ホルヘ・デリーア。

 「中南米映画特集」のパンフレットに、
 ブエノスアイレスに暮らすアリエルは、ポーランドへ移住しようと考えていた。ある日、幼い頃に家を出た父親が突然帰って来るが・・・。アルゼンチンの下町を舞台に、そこに暮らす様々な人々の人間模様と主人公の青年の心の成長を描く。ベルリン国際映画祭審査員特別賞、最優秀男優賞受賞。

 アリエルの母方の祖父と祖母は、ヨーロッパのポーランドで、ユダヤ人への迫害から逃れてアルゼンチンへ亡命した。
 母ソニア(アドリアーナ・アイゼンベルグ)はガレリアで下着ショップを経営している。
 アリエル(ダニエル・エンドレール)の父は、アリエルが生まれてユダヤ教徒のする割礼の儀式の後に、母と別れイスラエルへ去って行った。
 以来、毎月母へ養育費と電話をして来るのだが、一度もブエノスアイレスに戻って来ることはなかった。

 なぜ、母が父と別れてしまったのか。アリエルは祖母や母に尋ねてもどうも肝心のところがつかめない。
 祖母がポーランドのパスポートを今も持っている。
 アリエルは、ポーランドへの移住を計画しているが・・・。
 アルゼンチンのブエノスアイレスには様々な国からの移民が移り住んでいる。
 ガレリアで商売をしているのは、イタリア、ペルー、ポーランド、韓国などからの移民で、その混沌とした街でポーランドから亡命したユダヤ系移民の子孫であるアリエルが、母を置いて出て行った父と再会する物語である。
 
 父がイスラエルへ去って行った理由、祖母が封印していたポーランドでの体験、母が秘密にしていた出来事などが、父(ホルヘ・デリーア)がブエノスアイレスに戻って来たことでその謎が一気に明らかになる。
 母ソニア役の女優アドリアーナ・アイゼンベルグが素晴らしい演技で圧倒的だ。
 アリエル役のダニエル・エンドレールもいい。