エリダル・リャザーノフ監督の映画『ふたりの駅』

 6日、「ロシア・ソビエト映画特集」で上映された映画の最後の1本。
 エリダル・リャザーノフ監督の映画『ふたりの駅』(1982年、135分、カラー)を観に寄る。
 ゴールデン・ウィークで観客が多い。
 出演は、リュドーミラ・グルチェンコ、オレグ・バシラシヴィリ、ニキータ・ミハルコフ
 特集のパンフレットに、

 プラトンは途中下車した駅のレストランであらぬ疑いをかけられ、駅に留まることになる。彼はウェイトレスのヴェーラという女性と親しくなるが・・・。地方駅を舞台にウェイトレスとピアニストの出会いと愛の顛末を回想形式で描く。 
 冒頭、映画は冬の夜に刑務所で受刑者らが広場に整列している場面から始まる。
 整列した受刑者はひとりひとり名前を呼ばれ、返事をしている。
 そのうちの一人、プラトン(オレグ・バシラシヴィリ)は刑務官からプラトンの妻が会いに村へ訪れている事を知らされた。
 翌朝の七時までに帰って来れば脱走とはみなされないからと条件付で外出許可が下りた。
 プラトンはそのついでに刑務官から修理に出していたアコーデオンを持って帰るように命じられた。
 
 場面は切り替わる。
 鉄道駅へ列車が入って行く。
 列車は昼食のために停車する。長時間停車である。
 降りた乗客は、駅にあるレストランでメニューから選んで食事をするのだった。
 乗客の一人プラトンは昼食の品をめぐって注文を取りに来たウエイトレスのヴェーラ(リュドーミラ・グルチェンコ)とささいなことから言い争いになり、そのために列車の出発に間に合わなくなった。
 次の列車が来るまで翌日まで待たなければならない。ウエイトレスのヴェーラは、口喧嘩になった男プラトンのためにホテルを探してやるが見つからなくて、そうこうしているうちに自分の帰るバス便がなくなり、駅のベンチで二人は泊まる事になる。
 翌日に列車が来たので乗ろうとしたプラトンだったが、ヴェーラの恋人の車掌アンドレイ(ニキータ・ミハルコフ)から瓜(うり)を停車中に預かってくれと頼まれた。身元保証にパスポートを取り上げられて、しかたなくプラトンは待っていた。
 だが、またしても自分の乗る列車に乗り遅れてしまう。おまけにパスポートも持って行かれる。

 そんな不運続きのプラトンをウエイトレスのヴェーラは自責の念でホテルを知人に頼んでプラトンのために宿を確保しようとしているうちに、プラトンがピアニストであることやヴェーラが独り身で子供を育てている事情がしだいに明らかになる。
 鉄道旅行は、プラトンが刑に服する前の一時釈放で父親に会いに行く道中だった。
 モスクワでテレビの天気予報のキャスターを務めている彼の妻が引き起こした自動車事故をプラトンは自分が運転していたと偽って、罪を自分が負ったのだった。
 いつしか互いの境遇に惹かれる二人の恋のゆくえを描いて、ユーモラスな場面ににやりとする。
 プラトンが列車に乗る日にヴェーラは恋人の車掌アンドレイ(ニキータ・ミハルコフ)と別れる決心をした。アンドレイとプラトンの間でひと悶着があったが、プラトンの乗る列車をヴェーラは見送って別れた。

 そして、場面は切り替わって、冒頭の外出許可で村へ訪問した妻を訪ねて行ったプラトンに戻る。
 村の宿にやって来たのは、モスクワの妻ではなくヴェーラなのだった。
 再会を喜び、うっかり翌朝二人は寝過ごしてしまう。
 刑務所の門限時間の7時に間に合うかどうか、二人は急いで刑務所へ向かって道を駆け出すのだった。
 丘の上の刑務所のふもとにたどり着いた。
 朝の点呼の声が下にいる二人に聞こえて来た。もう間に合わない。
 とっさに、修理に出していて持って帰るように命じられ抱えていたアコーデオンを、プラトンは弾いた。
 その音色は丘の上の刑務所の広場で朝の点呼をしている所長の耳に鳴り響いて来るのだった。
 
 ウエイトレスのヴェーラ役のリュドーミラ・グルチェンコが好演している。
 元ピアニスト役のオレグ・バシラシヴィリの演技も良かった。
 恋愛コメディーなのだろうが、シリアスな場面設定の映画であるのだが、コミカルでユーモラスなセリフのやり取りや物語の意外性などがとても楽しめた。面白い作品だ。
 エリダル・リャザーノフ監督に注目する。

 左は車掌のアンドレイ、右はウエイトレスのヴェーラ。