映画『真夜中の顔』


 6月の「特集・新藤兼人のシナリオ」からの2本。
 三國連太郎が主演の作品。

 宇野重吉監督の『真夜中の顔』(1958年、歌舞伎座、76分、白黒)を観た。
 出演は、三國連太郎桂木洋子水戸光子梅野泰靖やすきよ)、若原雅夫、滝沢修小沢栄太郎

 

新藤兼人のオリジナル・シナリオをもとに宇野重吉が監督した作品。ある夏の夜、銀座のバーのホステスが殺された。居合わせた客やホステスは口封じのために店に閉じ込められる。時間は夜更けから朝まで、場所はバーの内部と、限定された枠組みの中で、緊迫したドラマが展開する。

 東京湾でバーの飲み客と出かけて誤って夕涼みの小舟から海に落ちて殺されるホステスの直江を桂木洋子が演じている。
 その恋人の新聞記者の木島を三國連太郎が、木島の恋敵の直江の夫の高田を信欣三が演じる。
 飲み客の中に遠山(若原雅夫)という有力政治家の息子がいて、スキャンダルになることを恐れて、ホステスの死を事故死に見せかけるために工作する。
 そのために殺し屋を雇う。
 直江(桂木洋子)の水死体を銀座のバーに運んで来て、バーにいた者を監禁した。
 バーのマダム(水戸光子)、ホステスの道子(中川弘子)、バーテンダー、呼び出された木島の上司の編集局長と直江の夫の高田、それに木島らも監禁される。
 殺し屋のボス松三(梅野泰靖)と子分らが見張っているので、外への脱出を図るも失敗する。
 監禁している間に、海でのホステスの水死が小舟に乗っていた役人と業者の癒着が表に出るので、もみ消そうと遠山(若原雅夫)が財界の有力者毛利(滝沢修)に依頼したので、毛利は新聞記事にさせまいと背後で動く。
 直江の偽(にせ)死亡診断書を書きにやって来る町医者を小川虎之助が演じている。
 ボス松三の持つピストルの争奪をめぐって、木島(三國連太郎)と屈強な子分の一人(芦田伸介)との乱闘シーンが壮絶だ。 
 そうこうしているとパトカーがやって来た。警部に小沢栄太郎。誰かが警察に通報したのだ。
 ボス松三が、遠山(若原雅夫)に裏切られたと気づき、遠山を刺す。 
 ラストのどんでん返しまで、手に汗をにぎる。
 痛快なサスペンス映画である。
 監督の宇野重吉佃島の漁師も演じている。


 もう1本は、
 関川秀雄監督の『大いなる旅路』(1960年、東映、95分、白黒)。
 出演は三國連太郎、風見章子、高倉健、中村賀津雄。

 

新藤兼人のオリジナル・シナリオによる作品。盛岡の機関区で働く岩見浩造は、先輩の機関士が亡くなる転覆事故を経験し、さらに仕事に情熱を注ぐようになる。大正から昭和の激動の時代を背景に、機関車一筋に生きた男の半生と、家族との絆を描く。

 蒸気機関車の迫力ある映像が見られるのが貴重だ。ラストの東海道線に特急こだま号が走る時代までの昭和を生きた鉄道員三國連太郎)の半生を感動的に描いている。鉄道ファンは必見ですね。