映画『人生、ここにあり!』

 《法律により精神病院が閉鎖されたイタリアの実話をベースに、病院を出た元患者たちと労働組合員が一体となって困難を乗り越え、前向きに生きていく姿を描いた「人生、ここにあり!」を、視覚障害聴覚障害の方もご鑑賞いただけるよう、日本語吹替え・日本語字幕・日本語音声解説つきで上映します。
 バリアーフリー上映会で、ジュリオ・マンフレドニア監督の映画『人生、ここにあり!』(2008年、イタリア、111分、カラー)を鑑賞する。
 原題は、Si Puo Fare。
 出演は、クラウディオ・ビジオ、アニータ・カプリオーリ、アンドレア・ボスカ、ジョヴァンニ・カルカーニョ。
 パンフレット解説より引用すると、
 

1983年、ミラノの労働組合員のネッロは、閉鎖された精神病院の元患者たちによる協同組合に異動させられる。ネッロは、毎日を無気力に過ごす彼らのために、床貼りを請け負う事業を立ち上げるが・・・。世界で初めて精神病院を廃絶する画期的な取り組みを巡る希望と現実をユーモラスに描く。


 ミラノのネッロ(クラウディオ・ビジオ)は組合活動を左遷されて、精神病院の元患者たちによる協同組合の現場にやって来た。
 封筒に切手を貼る作業をしている彼らの仕事ぶりに出会って、請け負った仕事を彼ら元患者たちが客からの要望にただ対応しているだけで、自らの潜在的な能力を発揮していないとネッロには思えた。
 ある元患者は客からの注文の封筒に切手を貼っていく作業なのだが、決められた封筒の位置には貼らないで、封筒を束ねてパラパラ漫画風にすると、切手が封筒の表面を踊るように動いた。
 そのような仕事ぶりだったが、ネッロはそれを、彼の独自な芸術的な表現だと認め、そのデザイン能力を高く評価した。
 ただし、お客からの注文には正確な封筒の位置に切手を貼らねばならぬと説得するのだった。
 元患者たちと日々接しているうちに、彼らの潜在能力を発揮するための事業を立ち上げねばとネッロは思いつくのだった。
 ネッロはそのために元患者たちやネッロの事業立ち上げの提案に賛同する精神科医フルラン医師(ジュゼッペ・バッティストン)と議論をし、全員で賛否を問い、結果一同が賛成した。
 ただ、旧来のやり方に固執するデルベッキオ医師(ジョルジュ・コランジューリ)は反対した。
 床の張替え工事の請負業を、元患者たちと話し合って、政府から補助金をもらい立ち上げた。
 ただ、ネッロがこの協同組合の床張替え事業にのめり込んでゆくのを傍観する恋人のサラ(アニタ・カプリオーリ)は不満だったが・・・。
 ある日、ミラノで店の床の張替えを請け負って協同組合の元患者たちは張替えの仕事をしていた。
 ネッロはその日、ローマにイタリア共産党の書記局長エンリコ・ベルリンゲルの葬儀に出かけねばならなかった。彼はローマに向かった。
 納期が迫っているのだが、床に張る木の板の資材が仲間から届かないので、代わりに規格外の木片を代用して、床にモザイクの星型にデザインして敷き詰めていった。
 納期に間に合わせて完成させたが、それは客からの注文とはまるで違ったデザインだった。
 ローマから戻ってきたネッロは、完成した張替えが注文と違っていることを心配した。
 いまさら注文の通りに作り直す時間がなかったからだ。

 だが、意に反して注文主が、このデザインを非常に気に入ってくれたのだった。
 その独創的なモザイク模様の床張り技術に、つきつきと注文が入り始めるようになり、しだいに元患者たちは自信と誇りを持ち始めるのだったが・・・。
 元患者とそれを支えるネッロや精神科医フルラン医師らの見守る中を、元患者らが日常生活の自立を目指して、悲喜こもごもの実験的な試行錯誤をユーモラスに描いている。