カレル・ゼマンの「鳥の島の財宝」

 《カレル・ゼマンはイジートルンカと並ぶチェコ・アニメーションの創始者であり、巨匠の1人です。ゼマンは第2次世界大戦中にチェコ・アニメーションの発祥地ズリーンを拠点に制作をはじめ、書き割りスタイルのセット、レトロなデザインの切り紙アニメーションや人形アニメーション、実写とアニメーションの合成などの多彩な手法を駆使してトリック映画の王道を歩みました。幻想の魔術師と呼ばれるゼマンの不思議で奇想天外な作品の数々をぜひご鑑賞ください。》

 「カレル・ゼマン特集」を開催している。
 カレル・ゼマンの『鳥の島の財宝』(1952年、チェコ、73分、カラー)を観る。
 
 人々が平和に暮らす美しい小さな島に、ある日、黄金がもたらされ、島民は争ったり憎み合うようになる・・・。伝統的なペルシア細密画のスタイルで描いたゼマン初の長編アニメーション。(特集パンフレットより。)

 冒頭、寒い国から暖かい南の島、物語の舞台である美しい小さな島へツバメたちが群れをなして飛んでゆく。
 その大空を飛んでゆくツバメの群れの映像美が素晴らしい。
 青空にツバメの黒い群れの飛んでゆくシルエットに躍動感がある。
 島は貧しいながらも平和に地道に暮らしていた。
、漁師は舟で沖に出て魚を捕っていた。
 パン屋は毎朝早く起きて島民のためのパンを焼いていた。
 仕立て屋や鍛冶屋も毎日地道に働いていた。
 ある日、漁師の一人が遭難した海賊を一人、海へ漁に出ていて見つけて助けた。
 島に連れて帰った貧乏な漁師は、今にも死にそうだった海賊の口から、海賊がある島に隠した財宝の場所を聞き出した。
 財宝を手に入れれば大金持ちになれる。そう思った漁師は島の財宝を捜しに行くのに、信頼できる仲間二人を加えて行くことにしたのだった。
 三人が舟で海賊の隠した財宝のある島へ向かった。
 だが、三人が相談しているのを隣人の男に盗み聞きされていた。
 男は、海賊の財宝のある島のことを妻に告げ口した。
 それが、口コミで瞬(またた)く間に、島民全員に伝わってしまった。
 そして、三人の舟の後を追って島へ大勢の彼らも向かった。
 そんなことは知らずに島の地図にある財宝の隠してある場所にたどり着き発掘しようとした時だったが、追いついて登ってきた彼らに横取りされてしまうのだった・・・。
 その後の、財宝の公平な島民への分配をめぐって騒動、島民が大金持ちになったと言って働くことを辞めてしまったことからの生活の混乱、欲望の増大による傲慢さなど人々の平安が揺さぶられる。
 ラスト、海賊を助けた漁師が、ついに思い余って海賊に財宝を奪って持ち去ってくれと頼み込み、その手助けをするのだった。
 海賊はまんまと財宝を舟で持ち去るが、あえなく財宝と一緒に海に沈む。島民は再び元の平和の島を取り戻すのだった。

写真は、漁に出ていて、海で遭難した海賊を救助した主人公の漁師。