「カレル・ゼマン特集」で上映されている作品の一本を観る。
カレル・ゼマンの『ほら男爵の冒険』(1961年、チェコ、83分、カラー)。35ミリフィルム。
出演は、ミロシュ・コペツキー、ヤナ・ブレイホヴァー、ルドルフ・イェリーネク。
月面に降り立った宇宙飛行士のトニークは、古風なロケットを発見する。彼は、先に来ていたほら男爵の案内で地球へ向かい、トルコの宮殿に到着する。彼らはそこで囚われの身の王女に助けを求められるが・・・。なぞの男に導かれた青年が奇想天外な旅を繰り広げる姿をユーモラスに描く。(特集パンフレットより。)
宇宙飛行士のトニーク(ルドルフ・イェリーネク)は月へやって来た。
月面に足跡が点々と見られる。誰もまだ月面に降り立ってはいないはずだが・・・?
古風なロケットが月面に突き刺さっている。
ロケットは、ジュール・ヴェルヌの小説『月世界旅行』のロケットだった。
そこへ思いかけず、彼に近づいて来る者があった。(なんと宇宙服を身に着けていない!)
ミュンヒハウゼン男爵(ミロシュ・コペツキー)だった。他に遅れてシラノ・ド・ベルジュラックも姿を見せた。
先住者の二人が、ようこそ月の世界へというわけである。
お酒をグラスに注いで飲みながら自己紹介するミュンヒハウゼン男爵にシラノ・ド・ベルジュラック。
そのミュンヒハウゼン男爵とともに、トニークは地球へ飛んで行くことになる。
月から飛んで行った先は、トルコの宮殿であった。
挿絵と実写が合成された特撮で、それが作り出すシュールな奇想天外な映像が楽しめますね。
宮殿には囚われの美しいビアンカ姫(ヤナ・ブレイホヴァー)がいて、二人は姫に助けを求められる。
ミュンヒハウゼン男爵とトニークは、剣で警護の兵士と戦い、無事、姫君を連れて海へ脱出し、通りがかった船の船長に助け上げられる・・・。
大砲の砲弾に乗ってミュンヒハウゼン男爵は味方と敵の間を飛んで往復する大活躍シーンもある。
カレル・ゼマンは、ミュンヒハウゼン男爵に『月世界旅行記』で知られるシラノ・ド・ベルジュラックを登場させ、荒唐無稽なほら話に仕立て上げている。
ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』を思い起こさせるし、不思議な空想世界を、挿絵と実写で合成させた特撮の映像美が愉しめます。
ジュール・ヴェルヌの小説のロケットを「引用」しているセンスがユーモラスで面白い。
カレル・ゼマン版の「ほら男爵の冒険」は、たとえばヨセフ・フォン・バキ監督の映画『ほら男爵の冒険』(1943年、ドイツ、102分、カラー)とくらべるとずいぶん違っていますね。
1943年の『ほら男爵の冒険』でロシアの女帝エカテリーナ役は、カレル・ゼマン版ではビアンカ姫があてはまりますか。
ビアンカ姫役の女優(ヤナ・ブレイホヴァー)がまた素晴らしい。