ミカンと誤訳の海

八朔


 21日、22日と気温は25℃まで上がり、早朝が15℃前後で寒暖の差が大きい。
 昼間は汗ばむ陽気であった。まだ山の樹木に紅葉は見られない。
 23日は二十四節気のひとつ霜降で、最高気温20℃、最低気温19℃。曇り。
 霜降とは、このころ霜が降りはじめることをいう。
 先日、ミカン畑にミカンが色付き始めていた。八朔はまだ色付いてはいなかった。

ミカン科ミカン属の常緑小高木。また、その実。暖地に産し、葉は長楕円形。初夏、白色の小さな五弁花をつけ、黄橙色の実を結ぶ。果樹として広く栽培され、ウンシュウミカン・キシュウミカンなど多くの品種がある。たちばな。こみかん。  『大辞泉

 霜降は季語で、飯田蛇笏の俳句に、「霜降の陶(すゑ)ものつくる翁かな」。

 新刊でアーサー・ビナード著『アーサーの言の葉食堂』を読む。
 『マガジンアルク』の連載、「日々のとなり」から作品を選び加筆して再構成したものである。
 「出世ドーム」を除いて。

 もくじ
 一章 ようこそ言の葉食堂へ
 二章 誤訳の海にこぎ出す
 三章 がんばればニッポン
 四章 万葉マンション入居者募集中
 あとがき

 「二章 誤訳の海にこぎ出す」の「ドフシミ先生?」に、『ドリトル先生』の井伏鱒二訳へ著者が個人的な疑問を述べている箇所が、面白い。
 

原作の主人公の名がDr.John Dolittleで、そのdolittleには「やることが少ない」、「あまり働かない」、はっきりいって「怠け者」の意味が入っている。ただしdo‐nothingほどはきつくないし、発音も楽しくかわいく響くし、憎めない「サボリ先生」といったところ。
 それが日本語では「ドリトル」だと知ったとき、ドキッとした。
 もしかして井伏鱒二先生が怠けて、そう訳したのか?  78ページ

 「出世ドーム」は末尾の文章で、それを読むと、著者は今広島の中区にお住まいのようだ。
 

広島は、住み着く前からずいぶん長く、足しげく通っていた街だし、市内の地名も電停の名前もすっかりなじんできた。けれど、いつまで経ってもしっくりこないネーミングがひとつある。わが家より二つ手前の電停、「原爆ドーム前」だ。  201〜202ページ

アーサーの言の葉食堂

アーサーの言の葉食堂