40年の感傷旅行

イチョウの葉

 イチョウの黄葉が散り、イチョウの樹の周辺が葉っぱの敷物のようになっている。
 「ちる木の葉渡世念仏通りけり
 小林一茶の俳句で、文化八年の句である。
 もう一句、「落葉して日向(ひなた)に立たる榎(えのき)哉
 享和三年の句です。
 
 師走に入り、一年を回顧する季節になりました。
 今年の夏の読書で、内堀弘著『古本の時間』(晶文社)があるのですが、この本の編集者が中川六平さんで、惜しくも9月に亡くなられた。 
 内堀弘著『古本の時間』について書き留めておきます。
 あとがきに、《中川六平さんが晶文社に復帰すると、「あの続きを作ろう」と言ってくれた。嬉しかった。私は「古本の時間」というタイトルがいいと言った。そして、この時間の一束を、平野甲賀さんがこんなに素敵な本にして下さった。》とあります。
 『石神井書林日録』(晶文社)の続きということでしょうか。 

 初夏に登山した山頂の展望台で、アメリカのミズーリ州から40年ぶりに日本を訪れたご夫婦に会ったことがありました。
 まだ小さい子供と三人で暮らした東京は、40年ぶりに訪れてみると、様変わりしたのは、高層ビルがやたらと増えていたことだと言います。浦島太郎的な感慨でしょうか。40年の歳月です。
 1973年の春に日本を離れる前の一年半ほどの間、東京周辺の米軍の病院で働いていたという昔話によると、当時ベッド数1000の病院が東京の周辺に四つあり、ベトナムから送られて来た傷病兵がいたそうです。
 このベッド数1000を強調して語っていました。
 ベトナム→日本→アメリカへと傷病兵は運ばれて行ったというわけでしょう。
 1973年の春に帰国することになるのは、ベトナムから米軍が撤退完了したからですね。
 この一年半の米軍の病院勤務の時期と重なる時期に岩国での体験を記した本に、中川六平著『ほびっと 戦争をとめた喫茶店 ベ平連1970―1975in イワクニ』(講談社)があります。

古本の時間

古本の時間

ほびっと 戦争をとめた喫茶店-ベ平連1970-1975 in イワクニ

ほびっと 戦争をとめた喫茶店-ベ平連1970-1975 in イワクニ