相米慎二監督(1948―2001)は、1980(昭和55)年に「翔んだカップル」で監督デビューし、独特の長回しの撮影で、俳優の心の揺れ動きを丸ごと捉えるような作風により、数々の秀作を発表しました。2011(平成23)年の没後10年を経て、シネマテーク・フランセーズなどで相米慎二監督の特集が開催されるなど、海外でもソーマイに注目が集まっています。また、日本の映画館でも凱旋上映のかたちで、相米作品が特集されています。この機会に、映像文化ライブラリーでも、デビュー作の「翔んだカップル」から遺作の「風花」まで、11作品を上映し、相米監督の軌跡を振り返ります。(特集パンフレットより)
相米慎二監督の映画『台風クラブ』(1985年、ディレクターズ・カンパニー、115分、カラー)を観る。
出演は、工藤夕貴、三浦友和、鶴見辰吾、大西結花。
舞台は東京近郊の中学校。台風が近づくなか、学校に残った生徒たちの心は揺れ動き、高揚していく。そうした生徒たちの行動や微妙な感情を、相米監督が得意とする長回しの撮影で見つめていく。第1回東京国際映画祭のヤングシネマ部門の大賞を受賞。
木曜日の夜の学校のプールで、黙々と一人泳いでいる男子生徒、長回し撮影で泳ぐ姿を追って行く。
彼は女子生徒らの悪ふさげで溺れてしまう。
連絡を受けた数学教師(三浦友和)がやって来て生徒を厳しく叱った。
翌日の金曜日の学校の授業、教師の醜態に反発する生徒たち、教室は荒れている。
土曜日の授業の教室での描写、生徒の心模様を描く。
土曜日、台風が接近して風雨が強くなる。
土曜の午後に部活の生徒が風雨が強まったので下校した。
しかし、男子2人と女子4人が学校から帰りそびれた。風雨が強く迎えに学校へ来てくれと担任の先生(三浦友和)に電話するも、担任は宴会をしていて行かれないと拒絶した。
台風が過ぎ去るまで学校へ泊まることに決めた6人は体育館で憂さを晴らすかのように歌って踊ってとお祭り騒ぎをするのだった。(ホラー映画のような描写もある。)
台風の目に学校が入り、風雨が止んだ小休止に、全員が校庭に出て素っ裸で歌い踊るシーンが印象的だ。
理恵(工藤夕貴)は台風の間東京へ家出をしていた。泊まる予定にしていた家を出て、家へ帰ろうとするも、電車が運行中止で足止めされた。
暴風雨の中の東京の街をさ迷う。
台風一過の月曜日、故郷の駅へ着いた理恵は学校へ向かった。
不思議な味わいのある映画である。