山中貞雄監督の映画『丹下左膳余話 百萬両の壺』

 「時代劇特集2014」で上映作の一本、山中貞雄監督の映画『丹下左膳余話 百萬両の壺』(1935年、日活太秦、91分、白黒)を観る。
 出演は、大河内傳次郎、喜代三、宗春太郎、澤村國太郎、高勢実乗、鳥羽陽之助。
 5月プログラムに、

 悲壮感あふれるヒーロー像で大河内傳次郎の当たり役となった「丹下左膳」を、山中貞雄監督はハリウッドの人情喜劇を参考に、江戸時代のホームドラマともいえるユーモラスな作品に仕立てた。恐妻家で情にもろい、庶民的な左膳が活躍する山中版「丹下左膳」。

 「人生は喜劇的でなければなりません」というのは、中村正常の言葉であったが、山中貞雄監督の映画『丹下左膳余話 百萬両の壺』は、それを味わえるユーモラスな時代劇だ。
 観るたびに新たな発見がある。
 高勢実乗と鳥羽陽之助の屑屋(くずや)のコンビが、屑かごを腰に着けひょこひょこさせながら歩き回るしぐさが面白い。つまり、ナンセンスなのだ。
 町道場で剣を教えている道場へ、小さな藩から婿養子に入った澤村國太郎の演じる源三郎は、妻に内緒で矢場へ弓を引いて的へ当てに出かけているが、矢場の用心棒をしている大河内伝次郎丹下左膳とは顔見知りになっていた。
 後にこけ猿の壺のゆくえと争奪をめぐって、金策のために道場破りをしていた丹下左膳が知らずに源三郎の道場で対決する羽目になる場面が滑稽で笑える。
 こういった演出が楽しめるのがいい。
 「人生は喜劇的でなればなりません」という見本のような傑作だ。

 左の写真が大河内伝次郎大河内傳次郎)、右の写真の右側が喜代三。