オタール・イオセリアーニ監督の映画「田園詩」

映画「田園詩」

 今月(10月)の「オタール・イオセリアーニ監督特集」からの一本。
 オタール・イオセリアーニ監督の映画『田園詩』(1976年、旧ソ連グルジア、98分、白黒)を観る。
 出演は、ナナ・イオセリアーニ、レゾ・チャルハラシヴィリ、タマーラ・ガパラシヴィリ。

黒海近くの農村で合宿生活を送る音楽家たちの日々を、農家の少女の目を通して描いた叙情詩。音楽家と村人との交流が美しい田園風景の中に綴られる。物語は村人が彼らに興味を抱き、酒場でからんだり、子どもが演奏の見物に集まったりといった、日常の些細な出来事の中で展開していく。ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞受賞。 (特集パンフレットより)

 ある夏の日に、都会から楽器を携えてバスで四人の男女の若者が自然にあふれた農村にやって来た。
 コルホーズの農家に泊まって楽器の演奏の練習をして過ごす日々が展開される。
 泊めてもらっている農家の娘やその家族との交流、都会からやって来た者に興味を抱いた農村の子どもや大人が演奏の音に惹かれて見聞しに集まって来る。
 都会からの音楽家たちが見聞きする村人の姿がドキュメンタリー風に展開される。
 コルホーズの農地にトラックに乗って出かけ農作業をする村人。トラクターが動いている。
 泊めてもらっている農家が庭に窓を造る工事をしているのだが、隣家の婦人が、その窓が自分の家の方を向いていると激しく非難をする。けしからんと腹を立てている。口汚くののしる。あまりに強烈に怒っているので滑稽である。
 音楽家たちは、家主の家族と森へイチゴを採りにいったりピクニックを楽しむ。
 村人との宴会で食べたり飲んだり、親睦をはかる。また些細なことから村人たちが取っ組み合いの喧嘩になったりするのだった。
 ほんの些細なことで人は取っ組み合いの喧嘩になる。
 農村の濃密な生活でもそんな喧嘩を相変わらず、人々は繰り返しやっている。
 にぎやかに騒いで日常の憂さを払いのけるかのような村人の宴会騒動。
 
 夏休みが終わる頃、雨が降ると家にこもって音楽家たちは過ごす。
 やがて、都会へ彼らが戻る日がやって来た。
 家主一家の娘やその両親らは、りんごなどを音楽家たちに土産に持たせて、都会へ戻るバスをいつまでも見送っているのだった。

 「田園詩」は、夏休みを田舎で過ごす都会人のひと夏の出来事を通じて郷愁を感じさせる映画だった。
 グルジアの農村で、ひと夏を過ごす音楽家たちの村人との交流をすがすがしく描いている。