小津安二郎監督の映画『学生ロマンス 若き日』

 小津安二郎監督特集が映像文化ライブラリーで1月から3月にかけて開催される。
 《今回の特集では、1929(昭和4)年に公開された「学生ロマンス 若き日」から遺作の「秋刀魚の味」まで、小津監督の現存する全作品を上映します。とりわけ、当館では初めて上映するサイレント(無声)作品からは、巨匠としての円熟味を増した戦後の作品とは、また趣の異なる小津作品の魅力を発見することができることでしょう。》(特集パンフレットより)

 小津安二郎監督の映画『学生ロマンス 若き日』(1929年、松竹蒲田、103分、白黒、無声)を観る。
 出演、結城一郎、斎藤達雄、松井潤子、飯田蝶子、坂本武、日守新一笠智衆
 原作・脚色、伏見晁。撮影・茂原英雄。

 何事にも調子のいい学生・渡辺と、実はスキーが苦手な学生・山本がスキーに出かけ、美貌の女性をめぐって恋のライバルに・・・。随所に秀逸なギャグが盛り込まれた青春コメディ。現存する最も初期の小津作品。フィルム提供/松竹 

 
 都の西北の大学の近くに間借りしている学生の渡辺(結城一郎)、「二階かし間」の張り紙を障子に貼り、間借り人の募集をしている。
 部屋を自分が出て行くのと入れ替わりに美人が入ることを願っていたら、千恵子(松井潤子)という女子学生が間借りしたいとやって来て知り合いになって、彼女が冬休みに赤倉へスキーに行くと耳にした。
 冬休みに入ると、友人の学生・山本(斎藤達雄)と連れ立ってスキー部の合宿に便乗して参加する。
 赤倉のスキー場で千恵子と渡辺と山本は再会する。
 映画は後半、結城一郎と斎藤達雄の二人が松井潤子の千恵子をめぐって恋の駆け引きをスキー場の野外を背景に撮っているのだが、スピード感あるコミカルな場面の連続で飽きさせない。
 斎藤達雄ハロルド・ロイドのような感じがする演技が愉しい。
 小津安二郎監督のコミカルな表現が秀逸である。
 スキー場で千恵子がお見合いする相手というのが、スキー部主将の畑本(日守新一)である。
 坂本武は教授で、目立たないが笠智衆がスキー部の学生役で出演している。飯田蝶子は千恵子の伯母役で出演。 
 スキー場でひっくり返っての場面で映像が90度回転するシーンがある。

 写真の中央が松井潤子、その右が飯田蝶子。赤倉のスキー場で。