かへりつく庵や春たつ影法師


 19日、二十四節気のひとつ雨水である。晴れて北風が強い。最高気温9℃、最低気温3℃。
 自然の移り変わりが植物の変化に見て取れる。
 梅の花が見頃になった。近くで観察するとほのかな梅の香りがした。

 「風呂あつくもてなす庵の野梅かな

 飯田蛇笏の俳句で、大正十五年に総州へ旅をした時の句である。
 前書きは、「きさらぎのはじめ総州の旅路に麦南の草庵生活を訪ふ」とあって、蛇笏が麦南(西島麦南)を訪れた。
 その蛇笏が総州の旅から戻って、麦南へ贈った句がつづく。

 「かへりつく庵や春たつ影法師
 「山風にながれてとほき雲雀かな

 この二句の前書きは、「総州の旅より二月十七日夜帰庵とりあへずその地の麦南のもとへ」。