猪啖ふ夕餐の餓鬼に湯気の冬


 快晴で、最高気温17℃、最低気温6℃。
 青空に白梅が鮮やかだ。梅の香りが周辺に満ちている。
 
 飯田蛇笏の句集を読むと、1937年(昭和十二年)の俳句に、「浅草風景」という前書きがあって、四句を詠んでいる。

 「水洟や喜劇の灯影頬をそむ
 「浅草は地の金泥に寒夜かな
 「猪啖ふ夕餐の餓鬼に湯気の冬
 「浅草や朝けに彌陀(みだ)の龕(がん)灯る

 三句目の「猪啖ふ夕餐の餓鬼に湯気の冬」で、啖(くら)ふは、食う、食らう。夕餐は晩餐(ばんさん)、夕食に食べるご馳走。
 イノシシの肉の鍋物牡丹鍋という。
 牡丹鍋を餓鬼のようにむさぼり食っている。
 浅草の料理屋で、牡丹鍋を囲む晩餐が目に見えるようだ。