小説「三の隣は五号室」のこと

 タチアオイが満開になった。タチアオイの背の高さは人の背ほどある。
 立葵タチアオイ)という植物名はその姿形をよくあらわしている。
 花びらの色が鮮やかだ。

 アオイ科の越年草。高さ約二メートル。葉は心臓形で浅い切れ込みがある。花茎は長く、梅雨のころに、紅・白・紫色などの大きな花を下から上へ順に開く。観賞用。はなあおい。つゆあおい。からあおい。あおい。  『大辞泉

 引用句は、「三方に蝶のわかれし立葵」(中村汀女

 今年の一月に創刊の雑誌に『アンデル』がある。
 中央公論新社からの「小さな文芸誌」だ。*1
 一月号から始まっている長嶋有の連載小説「三の隣は五号室」を毎回楽しみにしている。
 今月は「第六話 ザ・テレヴィジョン!」
 第一藤岡荘五号室というアパートの部屋が「主人公」といえる小説。
、第一藤岡荘の居住者は時代とともに入れ替わる。
 居住者の入れ替わりとその居住していた部屋に残された痕跡(こんせき)から語られる時代の風俗的な描写が読みどころである。


 諸木十三(もろきじゅうぞう)(12〜14年居住)
 アリー・ダヴァーズダ(09〜12年居住)
 三輪密人(みわみつと)(82〜83年居住)
 四谷光(よつやひかる)(83〜84年居住)
 藤岡一平(ふじおかいつぺい)(66〜70年)初代住人
 二瓶敏雄(にへいとしお)・文子(ふみこ)夫妻(70〜82年居住)
 八屋(はちや)リエ(91〜95年居住)
 九重久美子(ここのえくみこ)(95〜99年居住)
 五十嵐五郎(いがらしごろう)(84〜85年居住)
 霜月未苗(04〜08年居住)

 諸木十三は、第一藤岡荘最後の住人。

*1:紙の小冊子「アンデル」は、数に限りがあり入手できない場合があります。と、巻末に購読方法が書いてある。電子版は各号200円。