“しもおれ”仲間

 『ユリイカ』8月号は江戸川乱歩・特集号だった。
 扉野良人の「乱歩と太郎とロビンソン」で、松山猛さんに言及されていて驚く。
 池内紀の連載「記憶の海辺 一つの同時代史」は「神様のノラクラ者 あるいはある独行者のこと」と題した文章で、おじにあたる人との若い頃の思い出、ドイツ文学をめぐる二人の対話が印象的だ。
 また「追悼*西江雅之」に、「“しもおれ”仲間」と題して池内紀さんが追悼文を寄せている。
 中央線三鷹駅前のしもおれという喫茶店で知り合った仲間という意味のようだ。
 《ともにそのころ大学に勤めていたがガッコーの話はしなかった。プライベートにわたることは、訊きもせず訊かれもしない。専門に及ぶことは問うまでもないし、問われもしなかった。では、何を話していたのかというと、旅のことや食べ物のことだった気がする。西江雅之には『花のある遠景』や『異郷の景色』など、すぐれた旅のエッセイ集がある。見知らぬ土地で、自分だけの出会いと発見をした人の印象深い言葉がちらばっている。
 ただし、それは著書のレベルであって、顔をつき合わせているときは、旅先のエピソードが主で、それもこっけいな失敗ばなしだった。西江さんはダジャレをまじえて、「ヒヒヒ」とひとりで笑っていた。》*1

花のある遠景 (東アフリカにて)

花のある遠景 (東アフリカにて)

異郷の景色

異郷の景色

*1:8月号の本文の著書名に一部誤植あり。