映画「ニューヨーク ジャンクヤード」

 「ハント・ザ・ワールド ハーバード大学 感覚民族誌ラボ傑作選」の一本。
 「ニューヨーク ジャンクヤード」(2010年、アメリカ、フランス、80分、カラー)を映像文化ライブラリーで観る。原題はFOREIGN PARTS。
 監督、ヴェレナ・パラヴェル、J・P・シニァデツキ。

 NYメッツの新球場「シティー・フィールド」のまわりには、自動車部品のジャンクヤードがひろがっている。移民たちの陽気な歌声とバーベキューの煙。グレーな仕事で稼ぐカップル、友人たちに毎日小銭をせがんで生活する老女。再開発のため、やがて消えゆく街でたくましく生きる人々に、豊かな暮らしのヒントを貰う。(パンフレットより)
 廃車になった自動車からまだ使える部品を取り出して、再生品として売る小売店が集まった地区は、雨が降るとぬかるみができるような環境なのだが、人々が必要な車の部品を求めてやって来る街だ。
 「ジャンクヤード」と呼ばれている。
 ニューヨーク市は、この地区を都市再開発する計画があり、住民との立ち退きの交渉をしているのだった。
 そういう立ち退きの話し合いがされている時期の住民の暮らしを描いている。

 スペイン語の歌を懐かしそうに陽気に歌う移民の人々。
 戸外で盛大に焼肉をつくる。食べて歌って、集まって人々は楽しむ。
 毎日、家々を訪れては小銭をせびる老女、老女に小銭を与える人々。
 夫が警察に捕まって久しぶりに釈放されて喜ぶ夫婦。
 貧しくとも互いに助け合って日々を過ごしているジャンクヤードの人々の日常をカメラは撮影している。
 犬が歩いて前へ進むシーンがあるのだが、低い位置で背後からカメラで追いかけている。
 犬が歩いて進んで行く、その映像がとりわけ秀逸だった。
 それと、小銭をせびる老女の元気な姿が印象的だった。
 この地区に暮らしてきた人々の歴史やその物語を淡々とそれも驚くべき映像美で描いていた。
 
 最終的には、このジャンクヤードの広い地区は取り壊されて、市民の住宅建設や大ショッピングセンターとして再生され、この地区は消滅することになった。