『ヨーロッパ特急』を読む

 阿川弘之著『ヨーロッパ特急』を読み終える。
 阿川弘之著『ヨーロッパ特急』は昭和38年(1963年)9月発行の本で、装丁は柳原良平。表紙は柳原良平のイラストだ。
 六十日間、阿川弘之は、ヨーロッパ、ソ連アメリカ合衆国を鉄道、飛行機、車、豪華客船やホーバークラフトで縦横に駆け巡った。
 西ベルリンへはハンブルグフォルクスワーゲンを一台借りて、五つくらいあるゲートのチェックポイントを越すのに前後一時間かかって西ベルリンへ向った。
 西ベルリンで、東ベルリンへの深夜のドライブを敢行する。
 小銃をかまえた検問所を通過して再び同じ検問所を何度も通過するのはスリリングだ。
 不審者に見られていたが、無事に最後の検問所を通過して西ベルリンへ帰還できたのだった。

 乗り物であればすべてを忘れて乗りに出かける阿川さんの旅行記は、しかし、それが一種の文明批評になっている。しかもその観察眼が面白い。
 また、1960年代当時の冷戦世界のきびしい東欧(東ベルリン)、ソ連の街を訪れ、西側世界の常識が通用しないサービスやホテルに泊まっても毎朝謎の電話がかかって来る不愉快なできごとや食堂のサービスぶりを観察してメモしたその見聞記が、歴史の記録としても、今なお貴重な旅行記であるように思える。