牡蠣むきの殻投げおとす音ばかり


 海辺の浅瀬にアサリを見つけた。
 水中のアサリが列をなしている。また、海草にふんわりと包まれたアサリもいた。
 付近の岩場には牡蠣(かき)が見られる。
 自然に岩礁に付いて育ったものだろう。海水が透明できれいだ。


 「牡蠣むきの殻投げおとす音ばかり
 「牡蠣むきに新しき牡蠣配り来し
 「牡蠣むきのこの日の殻は濡れてあり
 「牡蠣むきの夫婦と見えて隅に寄り


 中村汀女の俳句で、昭和十一年(1936年)の句である。
 「松島湾牡蠣むき場 四句」という前書きが付いている。

 牡蠣の殻をむく作業場を訪れて見物したときの句でしょうか。
 中村汀女の仙台時代の句になる四句である。
 塩釜の港や松島廻(めぐ)りの遊覧船や露店に気楽に寄ったという旨を、「汀女句集」の「秋ふたたび」の冒頭に書いている。