「芸術新潮」2016年4月号が出ていました。
特集「出版戦国時代のモンスター べらんめい国芳」という表紙ですが、特集の方ではなく、堀江敏幸の連載「定型外郵便」に目が行きました。
というのは、長谷川四郎の満州行の「謎」をめぐって堀江さんが書いているからでした。
長谷川四郎といえば、満州時代にウェ・カー・アルセニエフの『ウスリー地方探検記』を1940年4月、満鉄社員会叢書第四〇集、満鉄調査部第三調査室・訳で出版しています。
この本のことは、梅棹忠夫の『白頭山の青春』を読んだときに知ったのですが、梅棹忠夫は1940年に朝鮮と中国の国境にある白頭山に藤田和夫、伴豊との三人で登り、北の満州側へ降りて、第二松花江の源流を確認する探険登山をしています。
三人とも旧制の第三高等学校の三年生で、山岳部員でした。
当時、白頭山一帯は共産ゲリラが活動する危険地域であったのですが、たまたま遭遇することはなく、頂上から六日ぶりに満洲国警備隊の居るところへ到達し、無事に内地へ戻ることができたのでした。
頂上から白頭山の北面に広がる森林地帯が、ウェ・カー・アルセニエフの『ウスリー地方探検記』に書かれている森林の記述と同じであることに梅棹忠夫は感動しています。
この『ウスリー地方探検記』は、戦後、1965年に平凡社の東洋文庫でアルセーニエフ著 長谷川四郎訳『デルスウ・ウザーラ――沿海州探検行』として出版されています。
それはさて置き、長谷川四郎の満州行の「謎」をめぐる堀江敏幸さんの見立てが面白かったので、一読をお勧めです。