五所平之助監督の映画『新雪』

映画「新雪」

 今月は、広島ゆかりの女優、月丘夢路さんの作品を振り返ります。月丘さんは、1922(大正11)年に広島市に生まれ、宝塚歌劇団のトップスターを経て映画界へ転じ、大映、松竹、日活と活躍の場を変えながら150本余りの作品に出演しました。今回の特集では、瑞々しい演技が脚光を浴びた初期の代表作「新雪」、永井隆博士の妻を演じた「長崎の鐘」、被爆した広島の惨状を再現したドラマの中で教師役を熱演した「ひろしま」、長谷川一夫の相手役を務めた時代劇「一本刀土俵入」などを上映します。この機会に、日本映画を支えた大女優の一人、月丘夢路さんの魅力をご堪能ください。(特集パンフレットより)


 五所平之助監督の映画『新雪』(1942年、大映、84分、白黒)を鑑賞。
 出演、水島道太郎、月丘夢路、美鳩まり、高山徳右衛門、山口勇、浦辺粂子近松里子。
 原作・藤沢桓夫の新聞連載小説「新雪」を映画化。昭和17年公開作品。 

大阪近郊の国民学校で教壇に立つ蓑和田良太は、隣組の二人の女性、言語学者の娘・保子と女医の千代から思いを寄せられる。戦争の時代を背景に、良太をめぐる恋愛模様を描く。千代を演じた月丘夢路の演技が脚光を浴びた作品。 

 六甲山のふもとの国民学校の若い理想に燃える教師・蓑和田良太を水島道太郎が爽やかに演じている。
 ロケ地に阪急六甲駅、六甲山のふもとの小学校。
 良太と隣組の二人の女性で恩師(高山徳右衛門=薄田研二)の娘保子(美鳩まり)と女医の千代(月丘夢路)の恋愛模様を描きのびのびと爽やかな青春映画で、月丘夢路の演技がみずみずしく魅力的である。
 教師に苦情を言いに来る生徒の父親(山口勇)が物語の狂言回し役的な人物だ。
 その妻が浦辺粂子。 
 ラスト、教育召集で集められた良太が大阪城の練兵場で行進する場面がある。
 当時の世相を知る映像資料としても貴重なものだ。
 大映が発足したばかりの時期で、大都映画の水島道太郎や新興キネマの美鳩まりなどの元俳優が出演している。*1
 映画主題歌「新雪」の曲を灰田勝彦が歌い耳に残る。
 

*1:新興キネマの美鳩まりは、樺太(からふと)ロケの田中重雄監督の映画『北極光』(1941年、新興キネマ、108分、白黒)に出演している。浦辺粂子と山口勇も『北極光』で美鳩まりと共演している。