野は林檎町はあかあか晩鴉に満つ


 無花果(いちじく)の収穫の季節を迎えている。
 小学生の頃、隣にイチジク畑があり、畑の持ち主から頂いたものである。
 余ったイチジクでジャムを作ったりした。
 夏休みにはカミキリムシがイチジクの樹にいて、沢山捕まえていた。昆虫少年はカミキリムシを農協で鉛筆と交換してもらえるのだった。十匹で一本だったかな。
 余談で、昔、北海道の人から聞いた話で、イチジクは知らないと言うので驚いたことがあった。

 

クワ科の落葉高木。高さ約四メートル。葉は手のひらに状に裂けていて、互生する。初夏、卵大の花嚢(かのう)を生じ、内部に多数の雄花と雌花をつけるが、外からは見えない。熟すと暗紫色になり、甘く、生食のほかジャムなどにする。茎・葉は薬用。  『大辞泉

 「野は林檎町はあかあか晩鴉に満つ


 中村草田男の昭和二十六年(1951年)の句で、句集「銀河依然」に所収。
 津軽平野板柳町にて、と前書きがある。
 一面に広がる林檎畑と夕焼け空の鴉(からす)の群舞する光景を草田男は目にした。

 この年、草田男は津軽を訪れている。


 「昼の酔津軽の稲風稲ゆする
 「坪林檎太宰の故郷この奥二里*1
 「薊と小店太宰の故郷へ別れ道
 「太宰の通ひ路稲田の遠さ雲の丈(たけ)」 

*1:板柳町は太宰の故郷・五所川原へ二里の町。