日活は、1912(大正元)年に創業し、100年を超える長い歴史を持つ映画会社です。太平洋戦争の時代、戦時下の統制で、いったん映画の製作を中断しますが、1954(昭和29)年に製作を再開してからは、石原裕次郎をはじめ、小林旭、赤木圭一郎、吉永小百合、高橋英樹といったスターを擁し、“日活アクション”と呼ばれる作品群や青春映画などで人気を集めました。今月は、「俺は待っているぜ」「嵐を呼ぶ男」「陽のあたる坂道」など石原裕次郎の主演作を中心に、日活映画のスターたちが活躍した作品を特集します。 (9月パンフレットより)
「石原裕次郎と日活映画のスターたち」からの一本、鈴木清順監督の映画『けんかえれじい』(1966年、日活、86分、白黒)を鑑賞。
出演は、高橋英樹、浅野順子、川津祐介、宮城千賀子、加藤武、玉川伊佐男、佐野浅夫。
脚本が新藤兼人、美術を木村威夫。
時代は昭和10年頃、旧制中学に通う南部麒六は、喧嘩修行に励む一方、下宿の娘・道子に想いを寄せる。荒々しいアクションと笑い、そして青春の恋情。岡山と会津若松を舞台に、麒六の恋と喧嘩の日々を描く。
冒頭から、主人公の麒六(高橋英樹)の岡山の旧制中学で喧嘩に明け暮れる日々を描いているのだが、陰惨ではなく実に爽快な笑える青春映画だった。
下宿の娘の道子(浅野順子)に想いを寄せる麒六の純情さが微笑ましくて笑える。
岡山の旧制中学を追放させられて会津若松へ転校してもあい変らず会津の昭和白虎隊との喧嘩に明け暮れるのだった。
肥溜めで肥えを投げつけあって肥えまみれになるシーンもある。
ラストで、唐突に二・二六事件のニュースの新聞記事を見た麒六は、東京へ行こうと汽車に乗る。それと兵隊の駆足行進とその軍靴の音が路に響きつづけるシーンは昭和10年ごろの世相を象徴的に描いているように思えた。