連載が終わる。

コサギ

 水の少ない水路にコサギが餌を探しているのを見かけた。
 人への警戒感が強いのか、人間の姿を感じると大きなつばさを広げて飛び上がり近くへ隠れるような移動をするのだった。首を縮めると姿が小さくなる。


 「ユリイカ」2016年10月号は、特集=永六輔
 連載で、池内紀の「記憶の海辺――一つの同時代史」が最終回であった。
 「I・O氏の生活と意見 あるいは当人と夫人のこと」と題して最終回をまとめている。
 当人の話、本人の話、夫人の話、と語らせて池内さんの近況を伝えていた。
 連載完結の最後の言葉から引用すると、
 

おもえば当今の情報メディアをさっぱり欠いています。新聞もとっていません。ときおり丸善に出向いて、ドイツの週刊誌「シュピーゲル」を買い求めるぐらいです。時代に遅れるどころか、とっくに置いてきぼりをくっているでしょう。
 「まあ、いいか」と思っています。先頭集団に興味はなく、息せき切って駆けくらべをするガラでもなく、長距離レースによくあるように、一周か二周遅れで走っている、あれで結構です。おかげで、ほんのつかのま、ビリが先頭に立っているように見えたりします。トシをとっても三年先、五年先にどんなものをつくれるか、自分の可能性に賭けていなくては、モノを書く意味がないのです。  16ページ