咳き止むをわが待ち人も待つて居る


 街路樹に赤い実をつけた樹木が目立ちます。
 赤く熟したクロガネモチの実と良く似た赤い実を付けるタラヨウという木がありました。 
 説明板に、釘(くぎ)で葉っぱの表面に文字を書くと、けずった部分が黒くなって、郵便切手を貼れば葉書き(ハガキ)として使えると云う意味の説明が書かれています。 

 モチノキ科の常緑高木。暖地の山地に生え、高さ約一〇メートル。葉は長楕円形で大きい。雌雄異株で、春、黄緑色の小花を密生する。葉面に傷を付けて文字を書くことができるので、経文を書くタラジュにちなんで名をつけられた。もんつきしば。のこぎりしば。 『大辞泉


        タラヨウの葉


 「童等のふつつり去りし夕落葉
 「足袋先の冷たさのみにかかはりて
 「咳き止むをわが待ち人も待つて居る
 
 中村汀女の俳句で、昭和十四年(1939年)の句です。


 NHKラジオの番組に「ミュージック・イン・ブック」がありますが、今月(11月)は、古川日出男さんがゲスト出演をしていました。
 松浦寿輝さんのトーク番組でありまして、ゲストからのリクエスト曲を放送しています。
 
 その松浦寿輝さんが連載していた小説「名誉と恍惚」が「新潮」2016年9月号で完結しました。
 この小説に、1937年(昭和12年)の上海で逼塞して暮らす日本人が、当時の日本の新聞を読む場面があるのですが、その(引用されている)新聞記事を読むと、ちょっと歴史SF小説的な味わいがありました。
(2015年11月号の「名誉と恍惚」)。
 参照:http://www.shinchosha.co.jp/shincho/backnumber/20160806/