ロベルト・ロッセリーニ監督の映画『イタリア旅行』

映画「イタリア旅行」

 23日、「アモーレ! イタリア映画特集」と題して愛をテーマにした映画の一本が映像文化ライブラリーで上映された。
 ロベルト・ロッセリーニ監督の映画『イタリア旅行』(1953年、イタリア、85分、白黒、日本語字幕)で、館内は満席。中高年の女性客が多い。
 原題は、Viaggio in Italia。

 出演はイングリッド・バーグマン、ジョージ・サンダース、マリア・モーバン。


 ロンドンに住む会社役員の夫婦は、ナポリの別荘を処分するためにイタリアへ。見かけは仲のいい夫婦だが他人同士も同然。冷え切って夫婦仲は悪化の一途をたどり、離婚に突き進もうとしている。ナポリ観光も別行動だが、やがて素晴らしい景色や、古代美術、遺跡などの歴史の重みに心奪われ、敬虔な祈りの行列の中に失った愛情の痛みを見いだす。(特集パンフレットより)


 冒頭、イタリアをイギリスのロンドンから車で向かう結婚八年目の夫婦、車の前方に突如牛の群れが道路を横切る。
 二人の車は停車するのだった。 
 1953年(昭和28年)ごろのイタリア南部ののどかな農村風景だ。(当時の日本でも農業に農耕用の牛を飼っている農家があった。)
 別荘へ着くと管理をしている者らが出迎える。二人の心のわだかまりは解けず別荘で寝室を別々にする二人だった。
 相続した別荘を売却しに訪れた夫(ジョージ・サンダース)と妻(イングリッド・バーグマン)の二人の離婚寸前の心理劇が展開される。
 妻はナポリに滞在している合間にナポリの博物館、骸骨の埋葬されている教会堂、二人でナポリ近郊のヴェスヴィオ火山噴火で埋もれたポンペイの遺跡を観光するのだった。
 抱き合ったまま死んだ古代の夫婦の遺体の石膏像を観て気分が悪くなった妻を車に乗せてナポリへ戻った二人だったが、ナポリの街はキリスト教の祭の行列で前に進めなくなり降りた二人は、人混みに流されて離ればなれになった。不安で夫の姿を求める妻、見失った妻を人混みに見つけようとする夫。
 祭の群集の喧騒の中でおたがいが相手を見つけ駆け寄って抱き合い、結婚八年目の夫婦の離婚の危機から、二人が和解をする。


 観終わって、成瀬巳喜男監督の映画『驟雨』(1956年、東宝、90分、白黒)を思い出した。
 倦怠期の夫婦の感情の機微を『驟雨』の夫の佐野周二と妻の原節子が好演している映画で、庭で紙風船を二人でついて遊ぶ仲直りするシーンが素晴らしくて印象的だった。