リキュウバイ(利休梅)の白い花が青空を背にして満開です。
中島健蔵著『昭和時代』からの覚え書き。
大阪駅の近くのホテルに、一ヵ月あまりも軟禁されて、シンガポールが陥落したという発表があるとまもなく、広島まで列車で運ばれ、その次の日の夜明け前に、宇品まで行軍させられて、みどり丸という輸送船に乗せられることになった。(中略)
わたくしは、四十歳をこしていた。徴用令状を受けて最初に東京都庁に出頭したとき、はじめて自分のなかまには三木清、清水幾太郎がいることがわかった。そこで、この徴用は、実は徴の字の下に「心」がついた「懲用」であろうといううわささえ飛んでいたし、多少の不安をいただいたまま四十人のなかまと一しょに輸送船に乗り込んだのである。三木清はフィリッピンへ行くので東京から別行動をとり、同船した清水はビルマへ、わたくしはマレー半島へと行先もきまっていた。 155ページ