映画「無限のガーデン」

EUFILMDAYS、「フィルムデーズ2019」

映画で旅するヨーロッパ

欧州連合EU)加盟国各国の作品を一堂に上映する映画祭で、ブルガリア映画ガリン・ストエフ監督の「無限のガーデン」(2017年、ブルガリア、90分、カラー、ブルガリア語、日本語・英語字幕)を観る。

 キャリアや恋などすべてが思いどおりのように見えるフィリップは、両親の死の悲しみを引きずり続ける繊細な弟ヴィクトルの面倒を見ている。ヴィクトルの働く花屋の同僚エマに強く惹かれるが、ヴィクトルも彼女に恋をしていた。エマの作る「庭」が作品の重要なモチーフになっている。舞台演出家ガリン・ストエフの初監督作。 (「フィルムデーズ2019」パンフレットより)

 冒頭、ミニチュア模型の箱庭的な映像美ではじまる。ルール1、ルール2、ルール3、と言葉による守らなければならないことのナレーション。ルールのナレーションは映画のなかで何度も繰り返される。

 兄のフィリップは市役所で有能な役人としてゴミ処理問題で忙殺されている。市の行政への抗議の焼身自殺が起こった。街はゴミ回収業者のストライキで街中にゴミが放置された。弟のヴィクトルは花屋で働いている。店主がエマで、彼女はミニチュアの庭園を店の裏で製作している。

 ある日、弟に会いにフィリップは花屋へ寄った。ミニチュアの庭園のガラスの薔薇を一本触った時に壊してしまった。触ってはいけない。(ルールのナレーション)

 弟は合唱団へ入る。合唱団の練習に熱心に通うようになって元気を取り戻した。

 市の行政への抗議の焼身自殺事件は、フィリップに昔、両親と弟との四人で車に乗っていて事故になった惨事を思い起こさせた。遠出をした帰り道、自分が忘れ物をしたので取りに戻ってくれと駄々をこねた。その一言で、車をUターンしたのだったが、対向車と激突して両親を亡くしたのだった。

 兄弟二人は、そのトラウマを抱えて生きてきた。

 ミニチュア模型の箱庭的な映像美が印象的だ。

 フィリップの心理的な葛藤が、もろくはかない繊細なミニチュアの庭園に投影されているかのようだ。

参照:『EUフィルムデーズ2019』予告編

https://www.youtube.com/watch?v=EOxjZ0C6V_0