「ユリイカ」から

 編集グループSUREの新刊で、津野海太郎著『本はどのように変わっていくのか』が、本というものをめぐって討議したものでしたが、「ユリイカ」6月臨時増刊号が、「書店の未来 本を愛するすべての人に」という特集号だった。

 「誰のための書店」(柴野京子)から一部引用すると、

 書店の話はむずかしい。(中略)

 読書はおおむね私的な行為なので、そこにかかわる経験は個人の記憶に深く残る。とくに多感な時代には、一冊の本とそれを手にした時空間がひもづけられて、かけがえのないものに思われる。

 いっぽうで、本屋のことなど意識すらしない人ももちろんいる。都市には都市の、地方には地方の書店とのつきあい方があり、立場や思いによってフォーカスポイントは微妙に異なっている。さらに業界関係者や書き手などを加えていくと、書店をめぐる視点はまた複雑になる。何より当の書店自体が、もはやひとつの文脈ではくくれない。

 「ヴァンダーシュランクに書店の未来」(高山宏)は、高山宏さんの《誰とも異なる妙な本とのお付き合い》をめぐる自伝的な話を語っていてとても興味深く面白い。

 一部引用すると、

 人類学者の故山口昌男先生にはずっと古書の探索趣味の無さをはっきり叱られ通しだったが、趣味も、第一必要もないのだから仕方がない。