新刊案内から

 筑摩書房のPR誌「ちくま」10月号の新刊案内を見ています。
 今月のちくま文庫の一冊では、『温泉まんが』(山田英生・編)に注目した。
 先月、清水宏監督の映画「簪(かんざし)」(1941年、松竹・大船)、青柳信雄監督の映画「風流温泉 番頭日記」(1962年、宝塚映画)を観た。
 前者は、井伏鱒二の「四つの湯槽」の映画化。後者は井伏鱒二の小説「掛け持ち」の映画化作品。
 映画『簪』は身延山に近い下部温泉が舞台で、簪(かんざし)が湯舟に落ちていたためにケガをした帰還兵(笠智衆)と落とし主の女性(田中絹代)が東京から下部温泉へ駆けつけた後日談。夏休みの時期の温泉場を舞台にした湯治客同士の人間模様がユーモラスに描かれている。
 ラストは、ほろ苦く、休暇が終わった湯治客が温泉場を去って行く。
 ケガをした足の笠智衆が、田中絹代を背負って、渓流を幅の狭い板を並べた橋をふらつきながら渡る場面がある。
 一歩一歩前進するリハビリ中の笠智衆の足元がふらふらして、今にも姿勢を崩して川へ落ちそうになる。
 足元の一歩一歩がスリリングで、見る者は一歩一歩に目が釘付けになる。

 温泉をめぐる本といえば、池内紀さんに『湯けむり行脚』という新刊がありました。池内紀の温泉全書。

www.hanmoto.com

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