読売新聞の書評欄に毎週、「本よみうり堂」がある。3月8日の「現代×文芸 名著60」に、島田雅彦著『君が異端だった頃』を文芸評論家の佐藤康智氏が紹介している。佐藤氏は、《私は数年前、作者の年譜を作る仕事をした。(中略)図書館で資料を漁(あさ)りながら、マルチでカオスな作家の軌跡を年譜化することがいかに大変かを痛感するとともに、思った。自分で書けばいいのに。》
先月、『君が異端だった頃』を読んだばかりだったのでおどろく。《文学好きなら大岡昇平、埴谷雄高、安部公房、中上健次といった名だたる文士たちとの逸話にほくほくする筈(はず)だ。六回落選した芥川賞の裏話も面白い。》
『君が異端だった頃』で、文士仲間の草野球でのエピソードがオモシロかった。
編集者や文学者や作家が草野球をするのだが、昨年の夏に読んだ小説『猫の客』の筆者の平出隆さんへの人物評が戯画的に描かれて印象的だったからだ。『猫の客』で、シオカラトンボが左手の人差指に止まるシーンがあるのだが、野球もサウスポーなのだった。