『渋谷実 巨匠にして異端』を読む

  先日、映画本を眺めていたら、渋谷実についての本を見つけた。志村三代子・角尾宣信編『渋谷実 巨匠にして異端』で、手に取って見ると、表紙の写真が渋谷実監督の映画『自由学校』の最後のシーンにある横に伸びた松の枝に佐田啓二淡島千景の若い二人の恋人がぶらりぶらりと無心に子供のようにぶら下がっていて、地面に大きな身体(からだ)の佐分利信が眠っている。映画『自由学校』でもっとも印象的なシーンを表紙にしているので、この映画でのこのシーンを選んで本の表紙に装幀していることに感心した。渋谷実の映画を見て考えるのに最適な一シーンの映像だと思えるからだ。
 昨年が、渋谷実没後40年だったようだ。

 そういえば、初めて見たのは松竹キネマ90周年記念「喜劇映画の異端児 渋谷実監督特集」(2012年)であった。変な映画だ、コメディで皮肉たっぷり、笑える演出、にやりとした、強烈な風刺、悲劇なのか喜劇なのか、映画をめぐって談話をしたのが思い出される。

参照:http://www.suiseisha.net/blog/?p=13373

 [座談会]熊谷勲・紙屋牧子・坂尻昌平・鷲谷花を読むと、渋谷実監督の『悪女の季節』で撮影中に火薬の爆発事故、乗り物の事故で負傷者(俳優を含めて)が出たことがあったという。そういう関係者によるゴシップ的なエピソードが語られている。撮影現場での事故などで映画は完成が遅れたそうだ。

 
 

 

渋谷実 巨匠に渋谷実して異端

渋谷実 巨匠に渋谷実して異端

  • 発売日: 2020/10/26
  • メディア: 単行本