25日、「日本映画 スター・ベスト30」の特集から、安田公義監督の映画『一本刀土俵入』(1960年、大映、72分、カラー)を観る。
出演は、長谷川一夫、菅原謙二、月丘夢路、沢村宗之助。撮影が本多省三である。
10月プログラムより引用。
力士の駒形茂兵衛(長谷川一夫)は茶屋のお蔦に情けを受けるが、横綱になるという約束が果たせず渡世人に。数年後、再会したお蔦を窮地から救うべく、茂兵衛は敵に立ち向かう。長谷川伸の有名な戯曲の映画化で、長谷川一夫は戦前にも茂兵衛を演じている。
冒頭の水辺を舟がゆっくりと進む光景からお蔦のいる茶屋・安孫子屋の前の通りへとすすむカメラの移動撮影が素晴らしい。
江戸へ横綱になってみせると向かうふんどしかつぎの駒形茂兵衛と茶屋のお蔦(月丘夢路)の出会う場面、茶屋の前の通りで暴れていた船戸の弥八(沢村宗之助)に相手を間違われ茂兵衛はしつこくからまれる。
弥八からの乱暴に、やむを得ず応戦し、頭突きで茂兵衛は弥八を倒してしまう。
この乱闘場面で弥八の頭突きで倒れる込むシーンが笑える。
長谷川一夫の演技に茂兵衛の無垢な優しい心持が感じられる。
安孫子屋の二階から見ていたお蔦は、お腹をすかせ無一文だった茂兵衛へ巾着に入ったお金とかんざしを持っていかせるのだった。
横綱になって、今日の恩返しに土俵入りを見てもらいますと茂兵衛は言って別れた。
駒形茂兵衛が江戸へ去って、七年後。
渡世人として茂兵衛はお蔦に会いに戻ってきた。
繁昌していた茶屋・安孫子屋は廃業していて、お蔦は行方不明。
出て行った夫辰三郎(菅原謙二)の帰って来るのを待ちながら一人娘のお君と二人で飴売りをして暮らしていた。
茂兵衛が戻ってきた頃、辰三郎もお蔦と娘に会いに戻って来ていた。
博打場で辰三郎はいかさまをして金を手にするとばれて逃げ出した。
追っ手に命を狙われてようやくお蔦と娘のいる家へ逃げ込んだ。
その最中に、茂兵衛はお蔦の家を見つけたのだった。
博打場からの追っ手に囲まれた事態を察した茂兵衛は、ここは自分が追っ手を引き受けるからと、家を取り囲む相手を蹴散らし、一歩も近づかせなかった。
多くの追っ手をやり込めて倒した。その隙をみて、お蔦と娘のお君と辰三郎の親子三人は舟で水戸へと去って行くのだった。
ラストのお蔦が七年前のふんどしかつぎの駒形茂兵衛を思い出すシーンが良かった。
長谷川一夫の茂兵衛の恩返しの一本刀土俵入・・・。