2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

伊藤逸平の雑誌『VAN』の表紙のこと

朝早く散歩。目指すは郵便局だ。年賀状を出しに出かけるのである。晴れている。雲ひとつない空。小高い所にある家に柑橘類の木が見える。見事なので近寄って真下から眺めた。八朔の果実のようだ。 八朔(ハッサク)といえば、瀬戸田の宿で窓を開けると、一面…

海鵜と「離俗の生涯」

朝、NHKラジオの「ラジオあさいちばん」という番組から「ニュースアップ」で、「偽装社会」と題して、この一年を回顧する内田樹さんの話を聴いた。人びとが長期的な展望で、ものを考えていく、空間的、時間的にゆっくり、あわてないで・・・ということがなく…

年の瀬の用事

朝から小雨が降ったり止んだりだったが、夜半に晴れ上がった。満天の星である。天の川にペルセウス座やカシオペヤ座が眺められた。 年賀状をまだ書いていない。うーむ。年賀状といえば、深沢七郎の「いのちのともしび」という文に、 一二月になったといって…

『無妙記』のこと

通りすがりに見るネギ畑が、整然と苗が植えられている。その緑の帯が美しい。 日が沈んで南の空高く三日月が眺められた。 書店で文藝春秋のPR誌『本の話』2007年1月号をもらった。 池内紀の連載「ワキ役の花道」は、第九回《いやじゃ姫 深沢七郎「楢山…

『ウィーンわが夢の町』

南天の実が赤く熟している。鈴なりだ。目にも鮮やかである。 夕方、南の空に三日月が昇っていた。高度が三十五度くらいだった。 蕪村の句に、 既に得し鯨や逃げて月ひとり 三日月も罠にかゝりて枯野哉 ラジオ深夜便で「ないとガイド」の「読書で豊かに」を聴…

美の壺、鉄瓶

昨夜、NHK教育テレビの「美の壺」という番組を観た。先週は「和菓子」で、今週は「鉄瓶」であった。 横浜の日本茶専門の喫茶店では、鉄瓶で沸かした湯でお茶を入れる。鉄瓶でお茶を入れると、お湯がまろやかになり、日本茶が美味くなる。 砂鉄を使った鉄瓶は…

伊藤逸平の雑誌『VAN』のこと

冬至である。カボチャを食べて、ゆず湯に入った。 二十四節気の一。一二月二二日ごろ。太陽の中心が冬至点を通過する。北半球では一年中で昼がいちばん短く、夜がいちばん長くなる日。この日にはゆず湯に入ったり、地方によってはカボチャを食べたりする風習…

夢枕獏の『宿神』のこと

昨日、ラジオで「比叡おろし」の歌を聴いて、比叡山を厳冬に雪道をたどって、延暦寺の根本中堂を訪れたことを思い出したのだった。 今朝の朝日新聞に《新連載「宿神」夢枕獏さん、中沢新一さんと語る》と題して対談があり、夢枕さんが二十年以上前に中沢さん…

海に落とした名前

午前から正午すぎまで晴天で寒かった。ぶるぶる。山間部では積雪があったという。通り過ぎに山茶花(さざんか)の花を見た。金網のフェンスにトウカエデの葉が吹き飛ばされて絡み付いている。金網のそばの歩道にもトウカエデが散っている。夕方に一時しぐれ…

美の壺、和菓子のこと

昨日イチジク畑のイチジクの樹上にいた虎猫である。吾輩は猫である。まだ、名前はない。イチジクの木に登りながら、こう考えた。知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。とかくこの世は住みにくい。と猫が思ったか知らないが・・・。 昨夜、NHK教育テレ…

ブルーノ・ムナーリの本

晴れて日差しが強い。通りすがりにあるネギ畑の緑色のネギが目に鮮やかだ。冬のネギ。美味しそうなネギ。イチジク畑に取り残された実があった。イチジクの葉は黄色くなっている。とてもきれいな薄い黄色だ。 近寄ってイチジクの実と葉を見ていると、太い幹の…

生海鼠にも鍼こゝろむる書生哉

街路樹のトウカエデが紅葉している。落葉していないで枝にまだ残っていた。色が少しくすんでいるが、黄褐色で軽やかな感じがする紅葉だ。昨日、川に海鵜がいて、潜っては浮き上がってくるのを繰り返しているのだった。久しぶりに海鵜を川面(かわも)に見か…

映画『硫黄島からの手紙』

橋を渡っていると、岸辺に近い水面に鳥が群れていた。大きさや羽の様子から渡り鳥のヒドリガモかな。一部は岸辺にも上陸している。春先に突然に北へ飛び去って行った鳥たちが戻って来たのだ。 カモ科の鳥。全長四八センチくらい。雄は頭部が赤茶色で額が黄白…

北園克衛と田辺茂一の余白

通りすがりに見かけるビワの木に、つぼみが目に付くようになった。花はまだ咲いてはいない。ビワの花は目立たない地味な花なのだ。地味だけれども、花の香りはとてもよい匂いである。 紀伊國屋書店で小冊子『scripta』をもらう。winter2007。冒頭の斉藤…

拝啓 漱石先生

午後、NHKラジオのラジオ特集「拝啓 漱石先生〜没後90年〜」という番組を聴く。漱石が過ごした松山、熊本からの中継をまじえて、それとロンドン留学の話も話題にしながらのトーク番組。ゲストに緒川たまき、森まゆみ、夏目房之介、嵐山光三郎、茂木健一郎…

ソクーロフの『太陽』

七日は二十四節気のひとつ大雪(たいせつ)だった。「大雪」であるが、今年は思ったより暖かい。通りに面して柑橘類の木があり、枝を伸ばしている。近くで見ると八朔の実が生(な)っていた。黄色い実が鈴なりである。 ミカンの一品種。果実は表皮が滑らかで…

アレクサンドル・ソクーロフの『ロシアン・エレジー』

アレクサンドル・ソクーロフ監督特集の一〇作品を一挙上映中の映像文化ライブラリーで、『ロシアン・エレジー』(Elegy from Russia)を観た。六日のみ上映の二回のうち夕方からの回だった。観客は二十五人ほど。1993年のカラー作品で68分の上映時間の…

荒川洋治の『文芸時評という感想』のこと

夜半の月は天頂にあった。満月の明かりでもそばに星が見える。 SIGHT別冊『日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006』(ロッキング・オン)で高橋源一郎と斉藤美奈子の対談が面白い。特に、荒川洋治の『文芸時評という感想』(四月社)をめぐる高橋源…

銀杏踏みて静に児(ちご)の下山哉

公園のイチョウがすっかり散っていた。地面は黄色い敷物のようだ。夕方、東の空に満月、大きく見える。夜半に空を眺めると、南の空に高く昇っていた。月明かりが静寂な夜の気配をいっそう感じさせる。手のひらを月の明かりに差し出せば、はっきり見えるほど…

ブルーノ・ムナーリの『ファンタジア』

散歩の途中、ビワの木につぼみが生(な)っていた。まだ甘い香りのする花は見られない。最高気温は九度で、ぶるぶる寒かった。真冬の寒さだ。山茶花(さざんか)は今が見頃だ。 夜半に月を見る。満月になる前の十三夜の月であるが、蕪村の「月天心貧しき町を…

ブルーノ・ムナーリを読む

ブルーノ・ムナーリの『闇の夜に』を開く。原題はnella notte buia。 ぽつりと ともしびが はるか 遠くで はるか 遠くで かがやいている そして朝になる。草原(くさはら)のキリギリス、カタツムリたち、オオツノカブトムシ、クモ、ムカデ、アリや死んだ鳥…